幼馴染のち恋模様

先ほど見ていた入り口に近い窓側にあるソファー席に案内された。

「こちらでお待ちください」
「恐れ入ります」

しばらく建物内を見渡していると侑李が戻ってきた。

「お飲み物をお持ちしました。熱いのでお気をつけください」
「ありがとうございます。いただきます」
「それからこちらは今回のプロジェクトで開発予定の模型です。よろしければご覧になってお待ちください」

社員の方二人が慎重に模型をテーブルに置く。

「わぁ〜!」

思わず感嘆の声がこぼれる。侑李と社員の方たちは一礼して去って行く。
改めて模型に視線を戻す。開発予定である霜月駅周辺の模型はとても精密で思い出が蘇る。
ここよく通ったな〜
あ、このコンビニでよく買い食いしてたな〜
そんな思い出に浸りながら夢中で模型を眺めていると頭上から声がかかる。

「柚月さん?お待たせしてしまってすみませんでした」
「っ!」

驚いて危うく模型に顔を突っ込んでしまうところだった・・・。

「と、とんでもありません。トラブルの方は大丈夫でしたか?」
「問題ありません。早速始めましょうか」

切り替えの速さにさすがだなと心の中で拍手を送る。昔から器用になんでもこなすので美しい顔と相まって女の子が放っておかなかった。

「これは霜月駅周辺ですよね?こんなに細かく再現できるなんて・・・」
「実際にそこに暮らしている人たちの目線を入れたくて。”保存”じゃなく”息を吹き返す”が今回のテーマなので」

梗介は指先で模型の小さな路地をなぞる。その動きが丁寧で、建物に対する愛情が伝わってくる。

「東雲様は霜月が地元だとお伺いしましたが、今回のプロジェクトにはどんな思いで臨まれていらっしゃるのでしょうか?」
「大切な街の大切な人たちが繋いできた場所を私も私の力で守りたいと思いました。開発と聞くと歴史や思い出が消えてしまうように思われるかもしれませんが、そうではなく、歴史や思い出はそのままにそれが味となって強調されるように新しいものを取り入れる。昔ながらを大切にしながら大切な街がもっと大切にされるように精一杯努めたいと思っています」

梗介の言葉の誠実さに心が温かくなる。この街を大切に思っているのは私だけじゃないんだ・・・。
それから今回のプロジェクトに関する話をやりとりし、そろそろ終わろうかとしたところで梗介が提案してきた。

「柚月さんまだ時間ありますか?良かったらもう一つ模型があるので見て行きませんか?」

梗介の提案に心が躍りすぐさま「ぜひ!」と答えていた。

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