幼馴染のち恋模様

一緒に入っていた手紙を読もうと、手を伸ばす。梗介からの手紙なんて初めてで嬉しさに頬が緩む。



『葵へ

メリークリスマス

本当は直接渡したかったけど帰れそうに
ないから送ります。
俺がそばに居られない代わりに、この
指輪でしっかり周りを牽制するように。

愛してるよ

               梗介』



牽制って・・・。
梗介らしい文章に、近くにいるような感じがして胸が高鳴った。

スマホを手に取るとすぐに電話をかける。仕事中かもしれないけど伝えたかった。声が、聞きたかった。

「はい」
「っ!」

ワンコールで出るとは思わず、何を話そうか迷って言葉に詰まる。

「葵?もしかして届いた?」
「うん・・・こんなに綺麗な指輪、ありがとう。クリスマスの朝に届くなんて、本当にサンタさんみたいだね」
「サンタに頼んだからな」

子どもだと思っているのだろうか・・・。

「サンタさんにお礼の手紙書くね」
「なら、俺のシンガポールの住所に送って。俺がサンタに渡しとくから」
「ふふふっ」

その設定は貫くらしい。

「でも、こんな高そうな指輪付けて外歩けないよ・・・」
「付けなかったら指輪の意味ないだろ。付き合って初めてのまともなプレゼントなんだから、俺のためにも付けて」

そんな風に言われたら何も言い返せないじゃない・・・。

「・・・分かった。じゃあテレビ電話にして、私が指にはめるの見てて」
「何その生殺し・・・くっそー、俺が直接はめたかったのにっ」

テレビ電話は初めての試みで、なんだか緊張する。梗介の顔が画面に映し出されると、久しぶりに見る整った顔に心臓が跳ね上がる。
これは、心臓に悪いかもしれない・・・。

「それでは、誠に恐縮ではございますが、はめさせていただきます」
「ふっ、畏まりすぎだろ」

呑気に笑う梗介に若干の苛立ちを覚えるが、今はそれどころではない。集中しないと。

そっと触れると、少し冷たい感触。リングボックスから抜き取り、慎重に左手薬指まで持ってくる。
すると、スマホから梗介の芯のある声が響いた。

「柚月葵さん。俺と、結婚してください」
「えっ・・・」
「返事は?」

まさかの展開に戸惑う葵を急かすように梗介が催促する。
・・・答えは決まっている。

「よろしくお願いしますっ」

ついに、葵の左手薬指をリングが通すと、葵の瞳からは涙が溢れ出す。

「葵は泣き虫だな。抱きしめてやれないから泣くな」

愛しいものを見るような優しい眼差しで、困ったように葵を見つめ笑う梗介。
聖なる日の聖なる誓い。本番はもう少し先のお話・・・。

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