ゼロくんと中学生社長

絶体絶命の旅館経営

「え! 9月までもたないって!? どういうことなの! 零!」

 取り乱した私を光が手で制した。

「落ち着けって。零、説明してくれ」

 零はいつも通り落ち着いた様子で淡々と状況を告げる。

「ああ、今までは人気旅館だった頃の貯金で負債を補ってきたんだ。でも……このまま赤字続きだと底を尽きる。なんとか黒字化しないとーー」

 下を向いて疼くまる私の背中を、海斗が優しくさすってくれる。
 あたたかくて安心するけど、零から現実を突きつけられて 昨日「なんとかしよう!」と思っていた矢先ーー。
 勇気が少しずつ減っていくような感覚になる。
 顔を上げて、零の顔を見ると、少し悔しそうな表情をしているように見えた。

「海斗、光、ごめん。零とふたりにしてくれない?」

「え?」

 驚いた表情をした海斗の顔は、すぐに「心配」と顔に書いたような面持ちに変わり、私の顔を覗き込んだ。
 零との関係を修復してからじゃないと、前に進めない。
 零だけは私の味方をしてくれるかわからない……。
 私の力だけで、なんとか説得したい。

「ロビーで海斗と駄弁ってるよ」

 黙っていた光は、私の気持ちを尊重して立ち上がる。
 「海斗、行こう」と海斗の腕を引っ張った。

「零、凛星だっておじさんがいなくて不安なんだぞ。昔は零も……」

「わかってる!」

 海斗の言葉を遮るように、零が聞いたことのない大きな声を出す。
 「そうか……」と言って海斗は光と部屋を出ていった。



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