海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
医療と軍営の拠点がはっきりとしたなら。あとは迅速に⋯運用するのみ、だ。
私は福を従えて―⋯現代における「トリアージ」を施していく。
「夏に色とりどりのタグなどない」と自分に言い聞かせて、けれど―⋯他の者が判断できるように。
重傷人には―⋯本人及び獣の血で、額に印を描いて。
「福。緊急性が高い者には―⋯【赤】を。早急に湖に運んでもらう」
中等症の者には、待機を。
「【黃色】に該当する者には―⋯」
周囲を見渡して。そこに何もないのなら―⋯その地そのものを利用する。
「泥で△の印を。救助が来るまでの間に身を守れるよう、痛みを取る処置と加護のほどこしを。福、貴方はその場にいるだけで癒しとなる稀有な存在。他の霊力ある者と共にその力を⋯少し分け与えてほしい」
それから、緑に該当する者―⋯少々の怪我程度の、軽症者には。
「⋯⋯自ら応急処置をするように指示を。墨で印を書く。この印をもつ者は、各所へと送って生き残る為の新たな役割を。薪割りや煮出し、炊き出し、物資の管理に、石鹸精製。現場を回す裏方として、まだまだ動いてもらう」
福には―⋯生存の確認方を教えて。それから、心肺蘇生法をレクチャーして。
呼吸の停止及び心停止。つまり―⋯もう、助ける手立てを失った者には。
「仰向けに寝かせ―⋯。組ませた手の上に、黒の石を。北の神が―⋯導いてくれる。安息の地へ送り、静かに寝かせてあげましょう。愚強様!貴方の出番です。勇敢な戦士の尊厳を守り抜く為に―⋯冷風を送ってください。彼らを腐敗させることは、即ち貴方の怠惰となります」
けれど―⋯仲間の訃報に同様しないはずもない。
近くで共に戦う者は、涙を流して。その者を抱きしめて―⋯離さない、そんな状況を何度も目撃したのだった。
気持ちはわかる、と―⋯
そう言いたいのに。察しますと言うべきなのに。
恐ろしいほどに⋯冷静に眺めている自分がいた。
「⋯⋯その人を抱いても、呼んでも⋯その熱が、魂が、戻って来ることはありません。けれどこの石が―⋯北の神にその無念を届けてくれます。留めておくべきではありません。他の命を―⋯守りく抜くことを優先してください。それが、この者への弔いとなります。」
鬼のようだと言われるかもしれない。けれど、トリアージの優先順位を誤れば―⋯手が回らなくなるのだ。
解る人がわかればいい。誰一人無価値な死に方をせぬように―⋯。それだけが、私の願いだ。
各地点を飛び回る鳥達が、「ドローン」の役割を担い、博益へと次々と報告が入る。
笛の音色を変えながら―⋯博益は、その現状を伝えていく。救護の要請に、悪獣の接近。川の決壊への注意箇所や不足物資の連絡。
同時に彼が持つ、青銅の鏡がもたらす反射を利用して―⋯。その方角を、光で正確に伝えていく。
私はその合図を受けながら―⋯、的確に、淀みなく指示を貫いていった。
私は福を従えて―⋯現代における「トリアージ」を施していく。
「夏に色とりどりのタグなどない」と自分に言い聞かせて、けれど―⋯他の者が判断できるように。
重傷人には―⋯本人及び獣の血で、額に印を描いて。
「福。緊急性が高い者には―⋯【赤】を。早急に湖に運んでもらう」
中等症の者には、待機を。
「【黃色】に該当する者には―⋯」
周囲を見渡して。そこに何もないのなら―⋯その地そのものを利用する。
「泥で△の印を。救助が来るまでの間に身を守れるよう、痛みを取る処置と加護のほどこしを。福、貴方はその場にいるだけで癒しとなる稀有な存在。他の霊力ある者と共にその力を⋯少し分け与えてほしい」
それから、緑に該当する者―⋯少々の怪我程度の、軽症者には。
「⋯⋯自ら応急処置をするように指示を。墨で印を書く。この印をもつ者は、各所へと送って生き残る為の新たな役割を。薪割りや煮出し、炊き出し、物資の管理に、石鹸精製。現場を回す裏方として、まだまだ動いてもらう」
福には―⋯生存の確認方を教えて。それから、心肺蘇生法をレクチャーして。
呼吸の停止及び心停止。つまり―⋯もう、助ける手立てを失った者には。
「仰向けに寝かせ―⋯。組ませた手の上に、黒の石を。北の神が―⋯導いてくれる。安息の地へ送り、静かに寝かせてあげましょう。愚強様!貴方の出番です。勇敢な戦士の尊厳を守り抜く為に―⋯冷風を送ってください。彼らを腐敗させることは、即ち貴方の怠惰となります」
けれど―⋯仲間の訃報に同様しないはずもない。
近くで共に戦う者は、涙を流して。その者を抱きしめて―⋯離さない、そんな状況を何度も目撃したのだった。
気持ちはわかる、と―⋯
そう言いたいのに。察しますと言うべきなのに。
恐ろしいほどに⋯冷静に眺めている自分がいた。
「⋯⋯その人を抱いても、呼んでも⋯その熱が、魂が、戻って来ることはありません。けれどこの石が―⋯北の神にその無念を届けてくれます。留めておくべきではありません。他の命を―⋯守りく抜くことを優先してください。それが、この者への弔いとなります。」
鬼のようだと言われるかもしれない。けれど、トリアージの優先順位を誤れば―⋯手が回らなくなるのだ。
解る人がわかればいい。誰一人無価値な死に方をせぬように―⋯。それだけが、私の願いだ。
各地点を飛び回る鳥達が、「ドローン」の役割を担い、博益へと次々と報告が入る。
笛の音色を変えながら―⋯博益は、その現状を伝えていく。救護の要請に、悪獣の接近。川の決壊への注意箇所や不足物資の連絡。
同時に彼が持つ、青銅の鏡がもたらす反射を利用して―⋯。その方角を、光で正確に伝えていく。
私はその合図を受けながら―⋯、的確に、淀みなく指示を貫いていった。