重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~
第2章 契約から始まるふたり
 
 郊外の静かな住宅街。
 その一角にある、白い外壁の一軒家の前で、結月は深呼吸をした。

「……よし」

 隣に立つ昊は、いつも通りの無表情。
(自分の実家なのに、何でスーツ姿?それに、なぜか“お見合い失敗しました”みたいな空気をまとっているのが、おかしくて堪らない。緊張していて当然の私の方が、彼を宥めてるみたいな構図に笑みが零れる。……彼といると常識が常識でないのが凄い)

「緊張してます?」
「していません」
「……耳、赤いですよ」
「気温のせいです」
「ふふっ」

 インターホンを押すと、すぐに玄関の扉が開いた。

「お兄ちゃん、ほんとに連れてきたー! しかも、めっちゃ可愛い子じゃん!」
「……美羽、うるさい」
「いやいや、だってさ、お兄ちゃんが“結婚する”なんて言うから、家族全員で『え、どこの星の話?』ってなったんだからね?」
「地球の話だ」
「そういうことじゃないの!」

 玄関先で繰り広げられる兄妹漫才に、結月は思わず吹き出しそうになる。
 こっそり隣の彼の顔を窺うと、案の定、無表情のまま。

 でも、耳はやっぱり赤かった。

< 21 / 90 >

この作品をシェア

pagetop