重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~
美羽がふと真顔になって、結月の耳元でささやいた。
「無表情だけど、家族の誕生日とか、全部覚えてるし。私が風邪引いた時も、夜中に薬局まで走ってくれたし。……たぶん、今もすっごく緊張してると思うよ。顔に出ないだけで」
結月は、そっと昊の方を見た。
彼は相変わらず無表情で、お茶を口にしている。
でも、指先がほんの少しだけ、震えている気がする。
(——変な人。でもちゃんと、私と向き合おうとしてくれてる)
——その時だった。
それまで気配すら感じなかったリビングの奥の和室から、低く静かな声が響いた。
「……昊、もう手は握ったのか?」
「あら、誠一さん、いたのね。いるなら、ひと言くらい顔を出してくれたらいいのに」
結月が驚いて振り向くと、静かに開いた襖の奥に、昊と瓜二つの男性がいた。
不愛想な雰囲気に、理知的な眼差し。
昊より少しだけ恰幅がよく、口数はさらに少なそうだ。
「……握手はしました」
昊が淡々と返すと、男は小さく頷いた。
「……そうか。なら、初期接触は完了だな」
「ちょ、ちょっと! なんで“初期接触”って言うの!」
「……事実確認の報告だ」
「いやいやいや、そういう問題じゃないから!」
美羽が慌ててフォローするが、母親も呆れ返っている。