重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~
その言葉に、結月は一瞬だけ息をのみ、けれどすぐに、表情を戻す。
「……はい」
結月の小さな声が、リビングに吸い込まれていった。
結月の笑顔はどこまでも優しく、そして少しだけ寂しげだった。
「実家に戻ります。……もう、荷物は纏めてあるんです」
そう言って、結月は立ち上がり、寝室からキャリーケースを引き出して来た。
その動きに迷いはない。
「……そうか」
昊はそれしか返せなかった。
結月の決断を尊重してあげたいと思いつつも、胸の奥に何かが沈んでいくのを感じていた。
玄関で靴を履きながら、結月がふと振り返る。
その表情はどこまでも穏やかで、どこか決意に満ちていた。
「……昊さんの夢が叶う瞬間を見届けられて、よかったです」
昊は僅かに目を見開いた後、静かに頷いた。
けれどその胸の奥には、言葉にならない想いがじわりと広がっていた。
結月はキャリーケースを引いて玄関を出ていく。
扉が閉まる音が、やけに静かに響いた。
リビングには、結月が作った焼き菓子の優しい甘い香りが漂っていた。