推しに激似のクールな美容外科医のお飾り妻になるはずが、溺愛されて陥落寸前です
 央輔に変化があったのは、初夜の翌日、報酬のための子作りに励むようになってからだ。

 あの日を境に、央輔は溺愛モードのアーサー王子になりきっている。

 雰囲気は甘いしこれまで以上に優しくなった。

 一番の変化はスキンシップである。

 手つなぎやエスコートは当たり前。常に杏璃の傍に寄り添い、片時も離れようとしないのだ。

 食事のときにも隣に陣取り、隙あらばスプーン片手に「杏璃。ほら、これも美味いぞ」餌付けまでしようとした。

 挙げ句の果てには、杏璃を散々翻弄した後、バスルームにまで着いてこようとする始末。

 全力で阻止したものの「無理させたお詫びを兼ねて洗ってやるから遠慮するな」そう言ってくる央輔に、脱力した杏璃は為す術もない。

 それでも、羞恥には敵わず杏璃は俯いて縮こまっていた。

『杏璃、そんなに俯いたら洗えないだろ』

 央輔に指摘されたところで、羞恥で顔を上げられない。

 そうでないと、央輔の裸体が視界に入ってくるのだ。ましてや、明るいバスルームである。美術館に展示されている彫刻もかくやと見違えるほど、程よく筋肉のついた逞しい肉体美は刺激が強すぎる。

 そんなの当然だ。

 理想の男性を体現したアーサー王子と瓜二つどころか、正真正銘、推し本人なのだから。

 しかも、推しに自身の裸体も晒しているのだ。恥ずかしいに決まっている。

 だから『顔を上げられない』と伝えたくて、杏璃は消え入りそうな声で正直に答えたのだ。

『……だって……恥ずかしくて、目のやり場が……』
『なら、こうしようか』

 ――わかってもらえたようで、よかった。

 央輔の言葉に安堵しかけた杏璃の身体がクルッと反転させられ、背後から包み込まれた。

 もちろん、それで終わりではない。

 背中に密着した央輔が耳元で『これなら、見えないだろ』と囁きながら項にキスを落とす。

 それから杏璃の身体にボディーソープをかけ、大きな手で隈なく丁寧に清めはじめた。


 自身のあられもない声がバスルームに反響して羞恥心が煽られる。

 恥ずかしくてどうしようもない。

 声を抑えようにも、央輔が休みなく快感を与えてくるため叶わない。ましてや、寝室で何度も愛され身体は敏感になってしまっている。

 少し触れられただけで快感を得てしまう。

 容赦のない愛撫から逃れようにも、央輔に背後からホールドされているので無理だ。央輔の逞しい腕の中で、甘すぎる快感に悶えながら身を捩り喘ぐことしかできない。

 ふいに愛撫が途絶えた。

 杏璃が乱れた呼吸を整えていると太腿に何かが触れる。それが央輔の腕だと理解したときには、央輔の手が股間へと到達していた。

『あっ、やあだ。ソコ……だめぇ』

 胸への愛撫だけで軽く達したのだ。今触れられたら、すぐに絶頂を極めてしまうに違いない。

 これ以上快感を与えられたら、自分はどうなってしまうのだろうか――脳裏に不安が過る。

 何より、自身のはしたない反応に気づかれてしまう。

 杏璃のささやかな抵抗も虚しく、央輔にすべて曝かれてしまうのだった。

『こんなにグチャグチャにして、嫌なんて言っても説得力がないぞ』

 耳元で意地悪な台詞を囁きながら、溢れた蜜を掬った指を杏璃の眼前に掲げてくる。

 その様がとてつもなく淫靡だ。

 意地悪な声で『素直になれ、ほら』そう視線を促されても、直視できない。

 パッと目をそらしたまま真っ赤になって慄く杏璃に、央輔が意外な言葉を囁いた。
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