もう一度、好きになってもいいですか?

「好きだ」

体育祭が終わって、夕焼けのグラウンド。

片付けが一段落して、周りもどんどん帰っていく。
一気に騒がしさが消え、なんだか名残惜しいような、寂しいような。

ふと見れば、美咲がスタンドの端で俺を待っていた。

 手を振る彼女に近づいた瞬間、胸がきゅっと締めつけられる。

人前だと強がれたのに……二人きりになると、言葉が出てこない。


「……お疲れさま。碧、すごかったよ」

「……ありがとな。美咲が見てたから、頑張れた」


 顔を直視できない。

でも、このままじゃ後悔する。
 深呼吸して、思い切って言った。


「なぁ、美咲」

「え?」

「……俺、もうごまかすのやめる」


 夕陽に照らされた彼女の目が、まっすぐ俺を見ている。
黒い瞳に夕焼けの朱色が反射して、まるで一種の宝石のようだった。

喉がからからで、心臓が爆発しそうだ。


「……好きだ」


 空気が止まった。

今までみたいに茶化すこともできない。
声は震えてるけど、心の底からの言葉だった。


「俺、お前が笑ってくれるのが一番嬉しい。

悩んで泣いてるときも、そばにいたい。
もう、美咲のいない日々なんて想像できないよ。

……俺、美咲のこと、本気で好きだ。

俺とお付き合いしてください」


 美咲は目を見開いて、しばらく固まっていた。
やがて、頬を赤くして小さく笑った。


「……バカ。
そんなの、ずっと前からわかってたよ」


 涙がにじんで、でも笑ってる。
俺の胸に手を伸ばして、ぎゅっと握った。


「私も……好きだよ、碧。
 こちらこそ、おねがいします」


 次の瞬間。

夕焼けのグラウンドに響いたのは、歓声でも茶化しでもなく、俺たちの鼓動の音だけだった。


(……よかった。やっと言えた。

美咲。俺、お前のこと、絶対に幸せにするから)
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