【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 奏汰の肩から、少しずつ余分な力が抜けていく。彼は深く息を吐き出すと、小さく笑った。

「……強情なのは俺じゃなくて、あんただろ」
「どっちもでしょ」

 晴菜が軽く言葉を返すと、視線が絡む。どちらからともなく、くすりと笑いがこぼれた。
 さっきまでの張りつめた空気が、ゆるりとほどけていく。壁時計の針がひとつ進んだ音と同時に、診察室の扉が開かれた。

「氷室晴菜さん、どうぞ」

 扉を開いた看護師と視線が合った晴菜は、ゆっくりと荷物を手に取った。奏汰がすっと立ち上がり、ゆるりと手を差し出してくる。

「行こう」
「うん」

 これから始まる新しい日々。予期せぬトラブルや、計算外の出来事が待ち受けているかもしれない。
 けれど、この強すぎるほどの手のぬくもりがある限り、どんな嵐も乗り越えていける――そんな予感が、まだ名もない小さな鼓動と静かに重なった。
 窓の外でひとひらの桜が風に舞い上がり、やがて静かに落ちていく。舞い散る桜を背に、二人は新たな命が待つ扉を確かな足取りで開いた。


《終》
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