だからアナタに殺されたい。
あれはあくまでエレノアが禁断症状に陥らない為に、必要な行為だったはずだ。
タブレットの代わりが俺だった。
…それなのに。
その行為が、逆効果だったというのか。
しかし、それでもまだ疑問はあった。
一度、直接血を吸えば、その快感ゆえに、吸血行為をやめられなくなるはずだが、エレノアはいつもちゃんと吸血をやめていた。
どんなにもっと飲んで欲しいと懇願しても、いつもの冷静で優しい瞳でそれを断っていた。
この本では、やめられない、と確かに書かれているのに。
何故なのか、と視線を動かすと、その答えはすぐにそこにあった。
直接血を吸う行為は基本、やめられず、相手を殺すまで血を求める。
だが、その相手を愛している場合は違った。
血を喰らいたい本能よりも、相手に生きて欲しいという理性が勝った場合、吸血鬼は吸血行為をやめられるのだ。
ただし、それでも血を求める本能は抑えられない。
死ぬまでその吸血鬼は、その本能に苛まれることになる。
そうして、いつしか壊れてしまい、禁断症状に陥る。
人間から直接血を吸ってしまった吸血鬼は、遅かれ早かれそうなる運命なのだ。
「…嘘、だ」
ポツリと俺から小さな声が漏れる。
知ってしまった事実に、胸がぐちゃぐちゃになった。
エレノアは俺のせいで壊れてしまった。
俺がタブレットを隠したあの日、俺だけを求めて欲しいと自分勝手な欲望をエレノアに押し付けたあの日の俺がエレノアをそうした。