悪女と罵られたので退場させていただきます!

5.悪役2

 婚約当初は普通でした。
 茶会の参加、夜会やパーティーでのエスコート。デート、プレゼントの数々。婚約者の義務をきちんと果たしていました。私を大切にしてくれていたのも本当です。
 それがいつの間にか崩れていったのです。
 何が切っ掛けだったのか……あ!あの時からだわ。
 そう!あれは確か――

『今、何と仰いましたの?』

『あ、その……ジェニー王女殿下が一緒に行きたいと……』

『今日のサロンは、特使夫人が主催だということはご存知ですわよね?』

『……あ、ああ』

『特使夫人のサロンは他とは趣が違います。まして、招待もされていない王女殿下を伴うなど以ての外。常識で考えれば分かりますでしょう』

『しかし、王女殿下自ら参加したいと言えば、どうにかできるのでは?』

 一体何を言っているのかしら?
 ご自分が何を言っているのか理解されていないのではないかしら?

『マナー違反だということを理解していませんの?』

『理解はしてる。しかし、王女殿下が行きたいと仰っているんだ。少しばかり融通を利かせられるだろう』

『融通?王女殿下といい、貴男といい、特使夫人のサロンを何だと思っていらっしゃるの?各国の外交官夫人が参加されるのですよ?王女殿下が諸外国の歴史や文化に詳しいとは聞いたことがありません。お話しについていけますの?いいえ、それ以前に、語学力は大丈夫ですの?』

『そ、それは……』

 言葉を濁らせるフリッド様。
 その様子では芳しくないのは一目瞭然。
 ジェニー王女が優秀だとは私も聞いたことはありませんもの。幼馴染の彼なら尚更理解している筈です。

『つ、通訳を用意してくれれば……』

『特使夫人のサロンに通訳は存在しません。ボルゴーヌ王国の恥を晒すことになりますわ。この国の王女は通訳人を頼らなければ外交使節との交流ができないと』

『っ!』

 反論できないのでしょうね。
 フリッド様の顔が青褪めていきます。

『分かっていただけたのならば結構。では、参りましょうか』

 何も言い返せないフリッド様を尻目に、私は彼の手を引いてサロンを後にしました。その後のことは敢えて語るまでもないでしょう。私は彼のエスコートで会場入りを果たしました。王女?さあ、知りません。風の噂では、その日、王女殿下は急な発作で倒れてしまったとか。倒れる前に奇声を発していたとか、いないとか。まあ、あくまでも噂ですけれど。

 そういえば、この後も――

 

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