総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「いっ……てぇ……」
肩を押さえて苦悶に顔を歪める琥珀。
けれど、彼はすぐさま這い起き、私を振り返った。
「胡桃、怪我ない?」
「……くそ、キリがない!」
九条くんは、残りの二人を相手にしていた。だが暴走者三人の同時制圧は一人では明らかに手が足りない。一人がすり抜けてこちらに走ってきた。
「私は大丈夫! 琥珀、その肩……!」
「平気平気、これくらい——」
強がっているけれど、さっきの衝撃は軽いものではないはずだ。
突っ込んでくる暴走学生。その瞳からは理性が消失し、ただ破壊衝動だけが渦巻いている。
無効化の力を発動させようとしても、中々上手くいかない。
……叶兎くんがそばにいないから……?
手をかざしても、あの時のような感覚が降りてこない。力が霧のように掴めなくて、指の間からこぼれ落ちていく。
「ァアアアッ——!」
学生が叫びながら私に掴みかかろうとした、その瞬間——
「——っらぁ!」
横から飛び込んできたのは九条くんだった。彼は学生を背後から組み伏せ、力任せに床へねじ伏せる。だがもう一人、最初に吹き飛ばされた方の学生が背後から九条くんに迫っていた。