Bella Notte
 クルーは虎視眈々と桜井との接点を狙っているようで、私がサービスに入る隙は全くなく。

 メインの夕食の配膳が終わる頃に、休憩時間になった所で桜井と偶然鉢合わせることになった。

「楓、ちょっとこっち」
 そう言って、ファーストキャビンへ行く様にうながされる。

 幸いクルーはギャレーでの作業と他のお客様へのサービス中で、一連の動きに気づく事はなく。

 ドアが閉め切られてしまえばそこは完全な個室空間。

「……制服やっぱり似合ってる」
 そんな言葉をかけられても、今は仕事中だしと営業スマイルを崩さない。

「桜井様、ありがとうございます。何かご要望などございますか」
 完全に仕事モードで乗り切ることにする。
 すると吹き出して笑い出したかと思うと、いきなり手が伸びてきた。

「会いたかった」
 そう言って、軽く抱きしめられる。
「ごめん、仕事中って分かってたけどどうしても我慢できなくて」
 いきなりの事に固まってしまって、気を取り直した頃にはすでに離れていた。

 「分かってるなら、もうしないでね」

 若干寂しいと感じたのを悟られないようにしながら。
「じゃあ、温かいお茶を持ってきてもらえますか」
 距離をとってくれる桜井にホッとした。

「承知いたしました」
 そう言って、密室空間から何とか脱出した。

 ギャレーにいるクルーへ伝言することにした。
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