Bella Notte
 「そのハルから連絡あって、楓をしっかりと捕まえておけって。言われなくてもそうするつもりだったけど」
 
 (次はあなただよって、そういうこと?)
 1人の世界で考えていると、隣から長いため息が聞こえてくる。
 「楓、俺はずっと、ずっと好きだったんだ。こんな事くらいで諦めないよ」

 そう言われて、鼓動が最高潮に高鳴っているのを治めることができそうになくて。
 呼吸が浅く早くなり桜井の香りが、フゼアが濃密に香る。
 大きな手が伸びてきて、抱きしめられた。
 「もう、逃さない」
 耳元で囁かれては。

 連れてこられた先は、ヘリポート。
 桜井が上着を優しく肩に掛けてくれて、車から降りるのにスマートにエスコートしてくれる。

 (意味が分からないんだけど)
 ガッチリと手を繋がれたまま、何度か振り払おうと抗ったけれど、桜井の鍛えられた体はびくともしない。

 優しく微笑まれ、有無を言わさず大きな腕に抱きしめられて抵抗は封じられた。
 (今まで手加減されてたんだ)

 「これに乗って」
 ひとしきり暴れたので、もう体力が残ってないし素直に従った。

 轟音を立ててヘリコプターが離陸する。
(もう、色々とキャパオーバー)
 ここまで来たら、とことん話しましょうと腹を括って。

 眼下に夜景が広がり、思わず魅入ってしまう。
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