Bella Notte
 懐かしい声と共に笑顔の文乃が車の助手席から顔を出す。
 意外な組み合わせに驚いてしまったけれど、久しぶりの文乃に顔が綻ぶ。

「文乃。会いたかったよ。」

 懐かしさのあまり、涙がこぼれる。
 驚いた表情の文乃が車から降りてきて優しく抱きしめてくれた。

 今、文乃とハルにすごく会いたいと思ってた。
 
 健人君がとりあえず、実家に帰ろうと言ってくれた。
 助手席の文乃と他愛もない世間話をしながら車を走らせてくれる。
 
 車走り出す車窓から流れる景色へ目をやった。
 しばらく無言で考え始めた。

 両親が亡くなってからサロンと自宅の管理は健人君に任っきり。
 社会人になってからは、年に1度は両親の供養に帰って来て健人君と会うのはその時くらい。

 生前はすごく仲のいい夫婦だった私の両親は結婚記念日の旅行の帰りに事故に遭った。

 一緒に仲良く天へ召されるなんて。2人らしいと今はそう思えるけれど、あの時は辛かった。

 沢山泣いて途方に暮れていた時に健人君が、オレがずっと側にいるって言ってくれたっけ。

 両親の代わりにはならないかもしれないけどって一緒に泣いてくれた。

 だけど、健人君にいつまでも此処にいてもらうのは申し訳ないと思って何度か話し合いをした。

 健人君は気にするなって今も変わらずサロンと家を守ってくれてる。

「今日は楓の実家に泊めてもらうね」

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