ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─
 雨音の中、私は世界から遮断された。

 体育館裏の倉庫。薄暗い空間に響くのは、激しく降る雨の音と、私自身の浅い呼吸だけ。

「お前はバカだな」

 夏雄先生の声が、いつもとは違って聞こえた。

「昨日あれだけ酷いこと言ったのに、また来て」

 財布を取りに来ただけだった。ただそれだけのはずだった。

 なのに、なぜ私はここにいるのだろう。

 先生がしゃがみ込み、私をじっと見つめる。その瞳の奥に、何か得体の知れないものが揺れていた。

「お前が俺を狂わせてるんだよ。自覚ないだろ?」

 私は何もしていない。何も言っていない。

 それなのに、先生の表情には、まるで私が何か悪いことをしたかのような——

「先生……私、何か怒らせてしまったんですか……?」

 先生は、しばらく黙っていた。

 そして、その唇から紡がれた言葉は——

「哀れだと思うよ」

 胸に何かが刺さったような痛みが走った。

 先生は私をそっと床に倒し、虚ろな目で私の首筋に唇を寄せた。その瞬間、頭が痺れるような感覚に襲われる。

 逃げなきゃいけない——そう思ってるのに。

 体が動かない。

 どうしてだろう。

 先生の言葉は刺のように痛いのに、触れてくる手は、優しい。掴まれている手首には力が入っていない。きっと、私が本気を出せば振り払える。

 なんで私は逃げないんだろう。

 どうして、先生はこんな中途半端なことをするの?

 そんな奇妙な優しさを感じていた時、私は気づいてしまった。

 こんなことをされても、私は先生に惹かれているのだと。

 ——でも、どうしてこうなったのか。

 すべては、あの夏の日から始まった。

 卒業してから数ヶ月、私が母校を訪れたあの日から——
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