赤い少女と吸血鬼

赤い少女と吸血鬼

 事情があって他人に育てられた少女がおりました。お金持ちの家で、夫人が真っ赤な赤を好んでおりました。だから、引き取った子供に、高価な赤い服、赤い靴、赤いぼうしを強制的に身に着けさせました。そのせいで、近所では赤い少女と呼ばれることとなります。奇抜な赤は目立ち、人目をひく色合いでした。少女はあまり赤が好きではありませんでした。ところが、全身が赤いということを同級生がからかい、少女はいじめにあいます。

 赤を身に着けることが嫌だと言ったのですが、義理のお母さんはどうしても赤を着てほしいと言いました。実の親も育ての親も信じられなくなった少女はあるとき、家出をしようと古い洋館に隠れることにしました。ところが、その洋館には吸血鬼が住んでいました。吸血鬼は彼女の悩みを聞いてくれました。吸血鬼を名乗る男性は見た目は十代くらいで、話してみるととても優しい男でした。そこで、育ての母親と同級生を赤に染めてしまおうと吸血鬼は提案しました。

「お義母さん、赤が好き? 青が好き?」
「探していたのよ。よかった無事で」

 義理の母親がかけよると、少女は聞きました。もちろん義理の母は、
「赤が好きよ」と微笑みました。

 少女も微笑みました。その瞬間、吸血鬼が義理の母の血を吸い取り、出血多量で義理の母は倒れてしまいました。傷口は深くそのままにしておいたので、義理の母のまわりは真っ赤な血にそまり、大好きな赤に囲まれて母親は死んでしまいました。

「さて、次は同級生の所に行こうか」
 真っ赤なマントをひるがえす少女の口元からは牙が見えておりました。
 翌日、同級生の3人が真っ青な顔で倒れているのが見つかりました。


★解説
 同級生が真っ青な顔で倒れていたというのは青が好きと言った可能性が高いでしょう。赤というだけでいじめていたのだから青を選んだのは容易に想像できます。真っ赤なマントに牙、少女は吸血鬼になってしまったのでしょう。
 でも、吸血鬼だとしても、一番信頼できる仲間ができた少女は幸せになったのかもしれません。
 どんな理由でも赤を強要させる母親は、彼女には苦痛だったのでしょう。
 いくら赤が好きでも自分の血に囲まれた最期は幸せだとは言えないと思うのです。
 彼女はこの先、本当のお母さんに会いに行ってしまうかもしれません。どんな理由かはわからないけれど、育ててくれなかったのだから。
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