色褪せて、着色して。~黒薔薇編~
 帰りの馬車で、3回くらい盛大なため息をついてみせた。
 目の前にクリス様がいるにも関わらず。

 王家の事情とやらで、よくわからないけど。
 少しの間だけ、別の場所で暮らせという命令だということだろう。
「毎回、申し訳ない・・・」
 ため息を見たクリス様が謝罪するが。
 それがどれだけ、逆効果だというかを全くもって学習なさらない。
 悪い人ではないとわかっているけど。
 本当に、この人。
 強制的にティルレット王国に連れ去ってやろうかという怒りが湧いてくる。
 婚約者と大人しく暮らしたらどうですかあ?

 想像以上に睨んでいたのか。
 クリス様は小さい声で「ごめんなさい」と言った。
「私は王家に心から嫌われているんですね」
 嫌味を込めて言うと。
 クリス様は、きょとんとした表情を浮かべた。
 まばたきを何度もする。
「王家が君を嫌い?」
「ええ。って、ちゃんと聴いてました?」
 この人はずっと上の空な気がする。
 扇子を広げて、顔を隠した。

「王家が君を嫌いどころか、むしろ好かれてる。だから、やっかいだ」
 
 今度は、私が思わず。きょとんとしてしまった。
 何を言っているのだ?
「特にローズとルピナスは・・・」
「へ?」
「いや。ごめん。これ以上は答えられない」
 まーた王家の事情か。
 ふうと何度目かわからないため息をついた。
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