拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

第二話 出逢い

ヤンチャだった頃の話

中学時代の悠矢は、
「強い」という言葉で片づけられるのが嫌いだった。

強い、というより、
止まれなかった。

何かを言われたら前に出る。
睨まれたら、睨み返す。
考える前に体が動く。

それで何度も問題になったし、
何度も呼び出された。

本人は、
それを武勇伝だとは思っていなかった。

ただ、
引く理由を知らなかっただけだ。

⸻

愁也は、
その頃から静かなやつだった。

同じ中学にいたが、
クラスも違えば、
交わる理由もなかった

目立たない。
騒がない。。
でも、
なぜか視線だけは合う。

廊下の端で、
悠矢が誰かと揉めている時。

愁也は、
遠くからそれを見ていた。

止めに来るわけでもない。
煽るわけでもない。

ただ、
逃げ道を見ている目だった。

⸻

二人が初めて言葉を交わしたのは、
放課後の校舎裏だった。

悠矢は、
一人で三人相手にしていた。

勝ち負けは、どうでもよかった。
ただ、引かなかった。

その時、
後ろから低い声がした。

「今、行ったら面倒になる」

悠矢が振り返ると、
そこに愁也が立っていた。

「誰だよ」

「関係ない」

それだけ言って、
愁也は顎で示す。

「でも、
 今なら帰れる」

⸻

不思議な言い方だった。

助けるでもなく、
命令するでもなく、
選択肢を置いただけ。

悠矢は、
一瞬だけ迷った。

その隙を見て、
相手が引いた。

喧嘩は、
それで終わった。

⸻

「……なんで言った」

帰り道、
悠矢が聞く。

「別に」

愁也は、
ポケットに手を突っ込んだまま答える。

「殴るなら、
 もっといい場所がある」

悠矢は、
思わず笑った。

「変なやつ」

「よく言われる」

⸻

その日から、
二人は少しずつ言葉を交わすようになった。

一緒に何かをするわけじゃない。
つるむほど近くもない。

でも、
喧嘩が起きそうな場所に、
なぜか愁也はいた。

そして、
悠矢が前に出ると、
後ろに立っていた。

⸻

まだ、
相棒という言葉はなかった。

我捨楽という名前も、
当然なかった。

ただ、
悠矢はその頃から薄々気づいていた。

(こいつが後ろにいると、
 変に考えなくていい)

それは、
楽になる感覚だった。

⸻

中学時代。
ヤンチャだった頃の話。

この頃の二人は、
まだ何も捨てていない。

だからこそ、
まだ本当の意味では、
楽しめていなかった。
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