海姫物語
10分、20分と呼吸を止めていても苦しくなることはなかった。
鼻で海中の酸素を取り込み、そして吐き出す。
長い時間海中を泳いでふと海面に顔を出すと施設のある透明島から随分離れてしまったことに気がついた。
だけど他の人に島の姿が見えなくても、そこで育った姫奈には場所がちゃんとわかっている。
体もほどよく疲れていて戻って熱いシャワーを浴びればぐっすり眠ることができそうだ。
そう思ったときだった。
「きゃははっ」
遠くで人の笑い声が聞こえてきて姫奈は振り向いた。
本土の浜辺で黒い影が動いているのが見える。
更にパチパチと火花が散っているのも見えて姫奈は息を飲んだ。
「あれって花火?」
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