麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
そう思うより早く、モモネリアの身体は勝手に踵を返して、その場を離れていた。声は聞こえなかった。何を話していたのかは、わからない。
でも、カーヴィンやハルカ、他の者から、リードネストは女性に興味がなかったと聞いている。
それなのに、あの笑顔を.....先日までモモネリアに向けてくれていたはずの、あの胸を締めつけるような笑顔を....自分以外の女性にも向けていた。
その事実だけで、モモネリアの心はひどくいたんで、苦しくて。モモネリアは、逃げたのだ。
涙が、ぽろぽろと溢れて止まらない。
......私以外に、あんなに優しく笑わないで。
......どうしてその女性の隣にいるの?私には....最近食事のときでさえ、会ってくれなかったのに。
........私を見てよ。その子を見ないで。こっちを、向いて。
さっき見た光景が頭の中をぐるぐるまわり、心の中がそんな醜い思いで真っ黒に染まっていく。
......馬鹿みたい。これじゃ、まるで....嫉妬、だわ。
モモネリアは、この日、初めて『嫉妬』という感情を知った。
.......リードに会ってから、知らない感情に出会ってばかり。
リードに会って、愛されることを知って、ただ相手に喜んでほしいと思える温かい気持ちを知って......独占欲や嫉妬みたいなドロドロした黒い気持ちを知った。
........こんな私、きっとリードは嫌になるわ。
.........私は.....どうしたら、いいの?
その時。
必死に駆け込んだ自室のドアがノックされた。