帰り道、君と
第1話
高校二年生の春。制服の袖が、少しだけ軽くなった気がする季節だ。
新しい教科書を鞄に入れながら、私――花宮里香は、通学路を一人歩いていく。
放課後、駅前行きのバス停に向かう途中で、私は足を緩める。
この時間、この場所で、ほぼ決まって会う人がいるから。
「……あ、花宮」
案の定だった。
バス停の少し手前、信号の影で立ち止まっていた彼と、目が合う。
少し色素の薄い髪に、切長の目。
幼馴染の星野陸だ。
星野と目が合ったのは、ほんの一瞬。
すぐにお互い視線を逸らした。
話すことは、特にない。
挨拶もしない。
それなのに、私は立ち止まらず、彼の横を通り過ぎることもできなくて――
気づけば、いつも通り隣を歩いている。
「今日、帰り早いんだな」
「まあね……。私、部活入ってないし」
一緒に帰る理由はわからない。
示し合わせた覚えもない。
ただ、そうするのが当たり前みたいに、私たちは並んで歩き出す。
小学校の低学年までは、よく一緒に遊んでいた。
「りく君とりかちゃんって名前似てるよね」
「きょうだいみたい!」
ある日、星野と一緒にいた時、同級生たちに名前が似ていることをからかわれた。
それが、いつの間にか恥ずかしくなって、距離ができた。
今は、名前で呼ぶこともない。
苗字でさえ、たまにしか呼ばない。
それでも――。
バス停までのこの短い帰り道だけは、なぜか一人にならない。
いつも、会ってからすぐに会話が消える。
楽しいことも、悲しいことも、星野には何も言わない。
星野だって、私に何も話してこない。
でも、沈黙が苦しいほどではない。
今日も、星野と帰る。
それが、私と彼にとっての日常の一部だから。
新しい教科書を鞄に入れながら、私――花宮里香は、通学路を一人歩いていく。
放課後、駅前行きのバス停に向かう途中で、私は足を緩める。
この時間、この場所で、ほぼ決まって会う人がいるから。
「……あ、花宮」
案の定だった。
バス停の少し手前、信号の影で立ち止まっていた彼と、目が合う。
少し色素の薄い髪に、切長の目。
幼馴染の星野陸だ。
星野と目が合ったのは、ほんの一瞬。
すぐにお互い視線を逸らした。
話すことは、特にない。
挨拶もしない。
それなのに、私は立ち止まらず、彼の横を通り過ぎることもできなくて――
気づけば、いつも通り隣を歩いている。
「今日、帰り早いんだな」
「まあね……。私、部活入ってないし」
一緒に帰る理由はわからない。
示し合わせた覚えもない。
ただ、そうするのが当たり前みたいに、私たちは並んで歩き出す。
小学校の低学年までは、よく一緒に遊んでいた。
「りく君とりかちゃんって名前似てるよね」
「きょうだいみたい!」
ある日、星野と一緒にいた時、同級生たちに名前が似ていることをからかわれた。
それが、いつの間にか恥ずかしくなって、距離ができた。
今は、名前で呼ぶこともない。
苗字でさえ、たまにしか呼ばない。
それでも――。
バス停までのこの短い帰り道だけは、なぜか一人にならない。
いつも、会ってからすぐに会話が消える。
楽しいことも、悲しいことも、星野には何も言わない。
星野だって、私に何も話してこない。
でも、沈黙が苦しいほどではない。
今日も、星野と帰る。
それが、私と彼にとっての日常の一部だから。