先輩、好きです。

かわいくない後輩





────息をするのも、忘れていた。




体育館のざわめきも、他の部員の動きも、すべてが遠くに霞んでいく。



私の目は、ただ一人の背中を捉えたまま離れなかった。




ゆったりとしたドリブルから、一気に加速。

床を蹴る音が鋭く響き、空気が一瞬張り詰める。



勢いに乗った体が相手陣地を裂くように進み、ボールが指先から放たれる。




ボールがリングに吸い込まれる音が、静かに体育館に響いた。




その瞬間、タイマーの甲高い音が響き渡り、試合形式の練習の終了を告げた。



張り詰めていた空気が一気に緩み、私の意識も現実へと引き戻される。


まだ胸の高揚感を抑えられず、そっと息を吐いた。



「翔ー、さっきのパスあんま見えてなかっただろ」


「いやいや余裕でしたって!むしろ先輩の動きは読みやすかったですよ」




笑い声と軽口が飛び交うコートの隅。

まるでずっと前からこの部にいたみたいに、誰とでも自然に打ち解けてしまう存在。
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