先輩、好きです。

かわいくない後輩

 

――――息をするのも、忘れていた。





体育館のざわめきも、他の部員の動きも、すべてが遠くに霞んでいく。


私の目は、ただ一人の背中を捉えたまま離れなかった。




ゆったりとしたドリブルから、一気に加速。
床を蹴る音が鋭く響き、空気が一瞬張り詰める。


相手の重心がわずかにずれたのを見逃さず、彼は鋭く重心の反対側へ切り込んだ。



スピードに乗った体が、相手陣地を裂くように進む。


ペイントエリアに踏み込み、ボールが指先から放たれた。





ボールがリングに吸い込まれる音が、静かに体育館に響く。




その瞬間、タイマーの甲高い音が響き渡り、試合形式の練習の終わりを告げた。




張り詰めていた空気が一気に緩み、私の意識も現実へと引き戻される。


まだ胸の奥の高揚感を抑えられず、そっと息を吐いた。
< 1 / 17 >

この作品をシェア

pagetop