『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
 14 ◇出会いというもの


何故なら、意図的に由香はこの先徐々に夫の世話をすることから、
離れていこうと決めていたから……。

自分の大事な時間は、愛する者たちへ使いたいというのはヒトの人情というもの
だろう。時間は有限なのだ。

一分一秒たりとも、自分を蔑ろにするような輩には使いたくない。

『もう、付き合いは止める。メールのやりとりも止めます。
今までの軽率な行為で君に嫌な思いをさせて申し訳ない』
との謝罪があったなら、話は別だ。

この先、仲良く過ごすために嫌々でも自分は努力しただろう。
だが、あの日のあの言い草はなんなのだ。

あのような結果ありきであるなら、もはや自分も生活の中での夫への忖度は
つゆほどもいらぬであろう、それが由香の出した結論だった。

正義はこれまで料理も含め家事全般に亘り器用によく手伝ってくれていた。
だからやる気を出せば、自分のことは自分でできる人なのだ。

妻の他に彼女を持ち、いそいそと毎日彼女との時間を楽しそうに過ごしている
輩は、妻からのサポートを受ける資格などない。

……というか、もうこの頃美代志のことで頭がいっぱいの由香はいうほど
正義への当て擦りをしていたわけではなく、仕事も持ち忙しい中、手持ちの
時間は限られていて、正義へ使っていた時間が美代志にシフトしただけなのだ。

更にはおそろしいことに、由香にしてみれば、正義の時間を削っても、罪悪感を
持たずに済み『あらっ、ちょうど良かったかも』くらいの心持ちになっていた。


人とは不思議なもので、誰かとの出会いが()いも悪いもすっかり自身を
変えてしまうことがあるのだ。

正義と満島まほりとの出会い……そして
由香の月城美代志との出会い……しかり。



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