『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
33 ◇ゴールデンウイークのできごと

ゴールデンウィークが、この年は前半の3連休と後半の4連休という形に
なっていて――――前半と後半の間には、出勤日が3日間挟まれていた。

後半の初日、正義がTVをつけたままパソコンを触ったりしてリピンクで
まったりと過ごしていたときのこと。

バタバタと息子たちが自分たちの部屋から出てきた。

またどこか友達の家にでも遊びに行くのだろうぐらいに思い、気にも留めず
正義はパソコンで気になる商品の価格を見比べたりしていた。

「お母さん、美代志くんのところへ行ってくる」

「じゃあ、サンドイッチ持っていってくれない?」

「うん。僕たちのもある?」

「3人分入れてあるから、みんなで一緒に食べればいいわよ」

「圭、早くしろよ。置いてくぞ」

「お兄ちゃん、待って~」

「ふたりとも、車に気をつけてよー」

賑やかしく、あーだこーだと言い合いながら――――
サンドイッチの入った袋を持つ悟と後から駆けてきた圭とが、ふたりして
家を出ていった。

子供たちが出ていったあとの、蒼馬家は急に静まりかえる。

パソコンに集中していた正義だったが、息子が話していた『美代志くん』という
言葉をきっちりと耳が拾っていたため、気になっていた。

慌ただしく出掛けていった息子たちを見送り、リビングを通り台所に向かっていた
由香は、正義から声を掛けられた。

「ねぇ、今悟が話してた『美代志』って誰?」

「あれっ? 私、話してなかったっけ……」

「聞いてないよ~。誰? その子」

「遠縁の子なんだけど、こちらで仕事をすることになって祖父が持っていた家にね……
ほらっ、今空き家になってるから、そこにね今住んでるのよ」

息子が話題に出したことで、由香は隠しもせず遠縁の男の子を空き家に住まわせていて、
時々子供を連れて様子見がてら遊びに行くのよと、シレっと夫に話した。

「それっていつから? 俺だけ知らなかったんだ」

「だって、あなた(・・・)休日はパソコンやスマホに熱中しているか、
出掛けているかでしょ? 話す機会なかったじゃないっ」

「そうだ──よね。すまない」

「……」  『まっ、いいけど』

「で、どういう親戚なんだい」

『どういう……』と訊かれ、思わず由香はぎょっとしてしまう。

 今ここで……
脳内でちゃんと説明できるかどうか、美代志に話した時の手順を思い出し
シミュレーションしようとした。



「ちょっと、あまりにも遠縁で思い出すのに時間が必要よ。少し待って」

「待つよ」
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