『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
40 ◇美代志の足跡(history)

 
 美代志の父親は、美代志が2才の時に病死した。
 そのため、母親が一生懸命仕事をして女手ひとつで美代志を育ててくれた。

 昼間はいつも母親のいない暮らし。

 それでも晩ご飯の時間になると、母親は疲れていても質素ながら手料理を作り
食べさせてくれた。

 疲れきっている母親を見て育った美代志は、子供の頃から早く大人になって
母親に楽をさせてやりたいと思っていた。

 そんな中、友だちの家へ遊びに行った時のことだった。

 友だちの中学生の姉が、弟と自分に向けて、ボーイズグループに応募してみればと
言い、面白半分に書類などを整えて応募してくれるということがあった。

 結局、友だちも自分も不合格で受からなかった。
 だが、芸能事務所に入れる窓口があることを知った美代志は、そこで
諦めなかった。

 その後母親に頼み込んで、6年生の時に再度事務所に応募書類を送って
もらった。

 この時も合格の通知はこなかった……が、不合格の通知も来なかったのである。

 モヤモヤ感が残ったものの――――
『どうなっていますか?』という問い合わせをする勇気は流石に出なかった。

 そんな美代志の元に2年後『レッスンに来てみないか』との誘いの連絡が
届く。 

 やはり『合格しました』の連絡ではなかった。

 けれども、一縷の望みを持ってレッスンに通うことにし、美代志は勉強も
おろそかにすることなく、レッスンも熱心に通い、歌と踊りに精を出した。

 半年後、運よく美代志はデヴューした。

 ただし、この時はインディーズでのデヴューだった。

 だが、大勢いるレッスン生の中の7名に選ばれたのだから頑張れば
メジャーデビューも夢ではないところにいる。

 そう自覚していた美代志は、他のメンバーと共にそれぞれの夢を叶えるため、
懸命にレッスンや仕事に取り組んだ。

 そして翌年、彼ら7人は念願のメジャーデビューを果たしたのだった。
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