『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
ご訪問いただきありがとうございます。
3月9日分、遅延してしまいすみません。
63話併せ更新致します。 ―――――――――――――――――――――――

64 ◇逗留


私はご機嫌な蒼馬さんの前で、神戸ビーフを少ししゃぶしゃぶして口にいれる。

わぉ、神戸ビーフが舌に触れた途端、ふわりとほどけ、なんとも言えない
旨味が口内に広がる。

「柔らかくて、美味しい~」

「……上手いよね」

「たまりませんっ」

「ははっ」

刺身も天ぷらも、素材そのものが際立ち、とても美味しい。

どの小鉢も味つけが絶妙で、ひと口食べるごとに小さな感動が生まれる。
美味しすぎて、もう反則。

箸を進めるたびに『これはすごい』と心の中でため息が漏れ、とにかくどれを食べても
外れがなく、最後の一口まで幸せが続いた。


「満島さん、めちゃくちゃ幸せそうだね」

「こんな美味しいもの、いただけてすごく幸せです」

「そんなに感激してもらって、ご招待のし甲斐があったわ」

「ありがとうございます」

こんなふうにたくさんの豪華な食事を前にして、私たちふたりの時間は
和やかに過ぎていった。



逗留している部屋は2部屋あり、食事などに使える客室とベッドルームが
付いている。

実は、食事をはじめる前から、隣に控えている豪華なベッドルームのことが
気になってしようがなかった。

それでも、素晴らしいお料理に舌鼓を打っている間は良かった。
けれど、食事を終えるとまた気になってしようがなかった。

蒼馬さんの様子を探るも、いつもと変わらず落ち着いて見える。

わざわざ2部屋もある部屋をとってあるのだから、今夜何もないってことはないよね?  
それとも蒼馬さんのことだから、ほんとに寝るだけとか?
 
普通ならカップルで温泉街のホテルに泊まるというのに、夜を何もなく過ごすなんてことは
有り得ない話だけれど──。

いくら考えても彼の思惑が読めない。


そのあとは、ふたりして窓際から外の風景を眺めた。

『どうして、旅行に誘ってくれたんですか?』

何度も口に出掛かったけれど、私はやっぱり蒼馬さんに訊くことはできなかった。

結婚相談所に入会して、いいところまでいったのに選択肢を間違えた自分。

だからこれ以上、自分だけが何かを期待しているふうに思われて、笑い者になり
恥をさらすようなことはしたくなかった。


「そろそろ、湯に浸かる?」

「そうですね。いい時間になりましたから」

 私たちは温泉に入るため、大浴場に向かった。

私は、大浴場なんてはじめてで、手足をたっぷりとひろげて大いに寛ぎ湯を
堪能した。
だんだん気持ちよくなっていき――――。

そのような中で、柔らかくてふにゃふにゃになった頭で考えた。

大人の関係になりそうな時と今までの関係通り、会話でもしながらただ
寝るだけなのかを……。

 果たして――――。










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