『愛をください』─ 叶わぬ想い ─

73 ◇突発的な行動

時は、ちょうど満島まほりが婚活をはじめ、最高に運気が上昇していた
頃のこと……。

少し前から、まほりの様子に変化が現れたことに正義は気付いていた。
自分への反応が薄くなっているような気がした。

『婚活でもはじめたか、はたまた、交際を申し込まれて付き合うような
ヤツでも現れたか?』

だが、そんなことは訊けやしない。


止める権利がないのは勿論のことで、訊いたからとて何になろう──の
境地である。

そんな風に毎日彼女のことを観察していると、綺麗になっているのがよく
分かった。

LINEの返信にも、昼ランチで話している時にも、自分に対して心ここに
あらずなのが分かるほどだった。

それほど、この頃の満島まほりは、分かりやすいくらいルンルンだった。

そして、自分(正義)に対して心ここにあらずの対応は今まで通りで
あったが、ある時期を境に、ふさぎ込んで見えるようになる。

話し掛けてもノリが悪く、LINEで気晴らしトークをしてもやはりノリが
悪い。

そこで、正義はしばらく自分から話し掛けることを控えることにした。

まほりと仲良くするようになってから距離を置くなどということは、
はじめてのことだった。
 

          ◇ ◇ ◇ ◇

それにしても、まほりとのことも含め──
正義はお盆を過ぎてから運気がいきなり低下しはじめたことで、動揺を隠せなかった。

それはちょうど、お盆に息子たちを連れて実家に帰省したあとの頃の話になる。

まほりはルンルンな様子ではあるが、何故か自分に対して心ここにあらず状態で、
今までのノリの良さがなく、彼女との交流に割いていた時間が圧倒的に
少なくなり──

元の彩のない単調な毎日で、正義の帰社する時間帯も自ずと早くなる。

由香が調理する時間帯に、リビングで寛ぐなんていつぶりだろうなどと
思いつつ、横目で妻の様子を眺めたり、子供たちの立ち居振る舞いを目に
したり……。

「じゃあこれ、美代志くんに届けてね」
「うん、分かった」

由香と悟の会話から、今日だけなのか、いつものことなのかは分からないが
晩御飯を美代志に届けていることを正義はこの時、はじめて知る。

いかに、これまで家族と関わっていなかったかということを自覚した一瞬でもあった。

その日から一週間で、毎日ではないが頻繁に由香が美代志に食事を届けている
ということを知る。

 そして、ある週末のこと。

息子たちと一緒にリビングで映画を見終えてからの入浴を済ませた正義は、
寝室に向かった。

するとその途中で、トイレを済ませ和室に向かおうとしていた由香と、廊下でバッタリと
鉢合わせすることになった。

シチュエーション的にいって、それは計画していたものではなく、
突発的な流れだった。

気がつくと正義は由香の腕を掴み、寝室に向かっていた。
 



 
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