MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 橘先生の部屋で私は吐露してしまった。

「いえ、彼とは上手くいってます。とても大切にしてもらってます」
「それで十分じゃねぇか」
「そ、そうなのですが……」

 橘先生は私の顔を見て、はぁと息を吐いた。

「相思相愛なんてのは奇跡だ。それを大事にしないでどうするよ。いいか。相手は自分じゃねぇんだから、心まで束縛はできない。お互い不安は残るんだよ。結婚しててもな」
「お互い、ですか?」

 私は意外という風に首を傾げる。

「お互い、だよ。相手だって不安なんだ。それでも信頼するんだろ。好きな奴のことなんだから」
「信頼……」
「そうだよ。信じてやらないでどうすんだ」
「でも……」
「でもじゃない。信じられないのは相手より自分を優先してるからだ」
「え?」

 私はどきりとする。

「信じて裏切られたら嫌だから信じねぇんだろうが」
「……」

 それはあるかもしれない。

「信じてやれよ。そして、惚れられてる自分はそう悪くないと思ってやれ。俺から見ても鈴木が何か劣っているとは思えない。逆になんでそんなに自分を卑下するのか分からんな」

 橘先生は煙草を美味しそうに吸って、煙を吐いた。

「自信を持て。こないだの説明会も良かったぞ。プレゼン能力が段々上がってる」

 橘先生は嘘は言わない。私は嬉しく思った。

「それから、竹部がシルビルナのことで聞きたいことがあるって言ってたから声かけてやんな」
「竹部先生がですか?」
「ああ」
「分かりました」
「鈴木は面白いな。営業のことになると顔つきが変わる。自分のことの時は自信なさげなのにな」
「そ、そうですか?」
「まあ、それも個性だ。自分を自分として受け入れてやれよ」
「自分を自分として……。頑張ります」
「まあ、ぼちぼちな」

 橘先生は煙草を持つ手を一度上げて、私の方を向いていた椅子をくるりと回して後ろの机に向き直った。

「ありがとうございました。シルビルナよろしくお願いします」
「はいはい」

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