鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
定時を少し過ぎたころ、コーヒーのお代わりをしようと立ち上がったら、長谷川と秦野ちゃんが同時にこっちを見た。
なんか睨み合いみたいな空気になってしまったので、長谷川にはジェスチャーで待っててもらうように頼む。
長谷川が小さく頷いたので秦野ちゃんと給湯室に向かった。
「大丈夫?」
「はい。……長谷川さんに謝られたんですけど、立花さん、弱みでも握ってるんですか?」
「あはは。まあ、ある意味そうかもね」
休みの日はエプロン姿で過ごしてることと、自分がモラハラ野郎みたいに思われてるのを気にしている。
それは弱みなのかなあ。
「でも、私も長谷川さんにビビっちゃって、話を全然聞けてなかったから、気をつけます」
「うん。それに、言われたことがわかんないのって、指示出した側の責任でもあると思うから。わかんなかったら、ちゃんとそう言ってほしいな。わかんないって言ってもらわないと、こっちも気づけないし」
「はい。長谷川さんにも言われました」
「長谷川が怖くて聞きづらかったら、私とか戸部先輩とかに聞いてくれてもいいし」
「ありがとうございます」
秦野ちゃんは、さっきよりホッとした顔で席へ戻っていった。
私は持ってきたマグカップを軽く洗って、ティーラテのスティックを開ける。給湯器からお湯を注いでいたら、長谷川がやって来た。
「おつかれ。……悪いな」
「何が?」
「秦野のフォローさせちまって」
「いいよ、別に。長谷川に謝られたって秦野ちゃんが驚いてた」
そう言うと、長谷川はやっぱり気まずそうな顔をした。
「悪いかよ」
「全然。むしろいいことだと思う」
「あのさ……いや、やっぱいいや。それなに?」
長谷川が私のマグカップを覗き込んだ。
「ティーラテ」
「この間のとは違うやつ?」
「うん。飲む?」
「飲む。この間のカフェオレも、甘ったるかったけど美味かった」
「ねー。疲れてるときって、甘いのが染みるよね」
「立花、酒飲みのくせに甘党だよな」
「私は何でも食べるし、何でも飲むよ」
さっきまでムスッとしていた長谷川が、そこでちょっと笑った。
「俺のエビカツも食ってたしな」
「コメダの他のメニューもおいしいよ」
「そうかよ。……で、さっきの料亭の件なんだけど、週明けに先方へ伺うから確認したいことがあってさ。秦野に追加で確認してもらったら、日程がちょっとキツい箇所あったんだよ」
「金曜の夕方に仕事増やさないでくれないかな」
「帰りにスーパーでカフェオレスティック買ってやるから」
「いや、それこの間私があげたやつだよね?」
席に戻って、ティーラテのスティックを一本渡す。
長谷川がそれを淹れるのを待ってから軽く打ち合わせをして、そのまま一緒に帰った。
スーパーでコーヒーやカフェオレのスティックを並んで選んでる途中でふと我に返ったけど、なんで長谷川と普通にスーパーで買い物してるんだろう。
結局、カフェオレだけじゃなくて、ココアと抹茶のスティックまで買ってくれたからまあいいか……。いや、いいのか……?
「おつかれー」
「おう、また来週」
マンションの部屋の前で別れた。
シャワーを浴びてさっぱりしてから、冷蔵庫のビールを取り出す。
あー、うまい。
この一杯のために私は働いているんだ。
来週もたぶん忙しいけど、まあ頑張ろう。
長谷川が前より丸くなってきた分、職場の空気もだいぶ良くなってきた。この調子でみんなと仲良くなってくれ。
なんか睨み合いみたいな空気になってしまったので、長谷川にはジェスチャーで待っててもらうように頼む。
長谷川が小さく頷いたので秦野ちゃんと給湯室に向かった。
「大丈夫?」
「はい。……長谷川さんに謝られたんですけど、立花さん、弱みでも握ってるんですか?」
「あはは。まあ、ある意味そうかもね」
休みの日はエプロン姿で過ごしてることと、自分がモラハラ野郎みたいに思われてるのを気にしている。
それは弱みなのかなあ。
「でも、私も長谷川さんにビビっちゃって、話を全然聞けてなかったから、気をつけます」
「うん。それに、言われたことがわかんないのって、指示出した側の責任でもあると思うから。わかんなかったら、ちゃんとそう言ってほしいな。わかんないって言ってもらわないと、こっちも気づけないし」
「はい。長谷川さんにも言われました」
「長谷川が怖くて聞きづらかったら、私とか戸部先輩とかに聞いてくれてもいいし」
「ありがとうございます」
秦野ちゃんは、さっきよりホッとした顔で席へ戻っていった。
私は持ってきたマグカップを軽く洗って、ティーラテのスティックを開ける。給湯器からお湯を注いでいたら、長谷川がやって来た。
「おつかれ。……悪いな」
「何が?」
「秦野のフォローさせちまって」
「いいよ、別に。長谷川に謝られたって秦野ちゃんが驚いてた」
そう言うと、長谷川はやっぱり気まずそうな顔をした。
「悪いかよ」
「全然。むしろいいことだと思う」
「あのさ……いや、やっぱいいや。それなに?」
長谷川が私のマグカップを覗き込んだ。
「ティーラテ」
「この間のとは違うやつ?」
「うん。飲む?」
「飲む。この間のカフェオレも、甘ったるかったけど美味かった」
「ねー。疲れてるときって、甘いのが染みるよね」
「立花、酒飲みのくせに甘党だよな」
「私は何でも食べるし、何でも飲むよ」
さっきまでムスッとしていた長谷川が、そこでちょっと笑った。
「俺のエビカツも食ってたしな」
「コメダの他のメニューもおいしいよ」
「そうかよ。……で、さっきの料亭の件なんだけど、週明けに先方へ伺うから確認したいことがあってさ。秦野に追加で確認してもらったら、日程がちょっとキツい箇所あったんだよ」
「金曜の夕方に仕事増やさないでくれないかな」
「帰りにスーパーでカフェオレスティック買ってやるから」
「いや、それこの間私があげたやつだよね?」
席に戻って、ティーラテのスティックを一本渡す。
長谷川がそれを淹れるのを待ってから軽く打ち合わせをして、そのまま一緒に帰った。
スーパーでコーヒーやカフェオレのスティックを並んで選んでる途中でふと我に返ったけど、なんで長谷川と普通にスーパーで買い物してるんだろう。
結局、カフェオレだけじゃなくて、ココアと抹茶のスティックまで買ってくれたからまあいいか……。いや、いいのか……?
「おつかれー」
「おう、また来週」
マンションの部屋の前で別れた。
シャワーを浴びてさっぱりしてから、冷蔵庫のビールを取り出す。
あー、うまい。
この一杯のために私は働いているんだ。
来週もたぶん忙しいけど、まあ頑張ろう。
長谷川が前より丸くなってきた分、職場の空気もだいぶ良くなってきた。この調子でみんなと仲良くなってくれ。