鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
定時前、外回りをしていた紫くんが戻ってきた。
長谷川と少し喋ってから、紫くんは私の隣にドカッと座った。
「お疲れさまでーす。そういえば最近、長谷川さん丸くなりましたよね」
「そうだね。ところで定時過ぎたし、私は帰りたいから自分の席に戻りな?」
「いや、一箇所ひどい目にあったんですよ。慰めてくださいよ」
「彼女にでも言え」
「いないから先輩にお願いしてるんじゃないですか!」
「うるさ……」
紫くんが戸部先輩の席でぐちぐち不満を垂れ流すのを聞き流しつつ、長谷川に頼まれたお客様先への日程調整の連絡を入れる。明日は丹沢先輩とお客様先へ行くから、資料ができているか確認して先輩に送って……。
「これ、問題ないから入力よろしく」
私と紫くんの間にスッと書類が差し出された。
何かと思えば長谷川で、さっきお客さんと調整した資料だった。
「了解」
受け取ると、長谷川は紫くんをジロッと睨んだ。
「お前はだべってねえで仕事しろ」
「は、はいっ」
紫くんが慌てた顔で自席に戻っていった。
改めて渡された書類を見ると、付箋に「入力後、俺にも一度回してくれ」と書いてあった。
「いや、口で言いなよ」
「うるせえのがいたからな。……あいつに何か用事あった?」
「ないよ。席に返してくれて助かったけどさ」
「だろ」
長谷川はニヤッと笑って、自席へ戻っていった。
なんだ……?
ともかく入力を済ませて長谷川にメールしようとしたところで、今度は丹沢先輩がやって来た。
帰りたいんだけど。
「さっきの資料確認した。問題なしだから印刷しといて」
「了解です」
「嫌そうでウケる。明日でいいよ。行くの午後だし。俺ももう帰るし」
「んー、一応印刷してから帰ります。こういうのって、明日に回すと紙とかインクとか切れてたりするじゃないですか」
「あるある。でも遅くならないうちに帰りなよ。いくらウワバミとは言え女の子だし」
「ウワバミ関係ないですよ……」
あはあはと笑いながら去っていく丹沢先輩を見送って、長谷川にメールしてからプリンターへ向かった。
お客さんの分と私たちの分、それに予備まで印刷して振り返ると、部署の人数はだいぶ減っていた。
ぐぬ……週の頭から遅くまで働いてしまった。別に女の子って歳じゃないからいいけど、逆に疲れが抜けにくいから、できれば早く帰りたい。
資料をファイルに突っ込んで、パソコンの電源を落とす。
立ち上がったところで、長谷川と目が合った。
「……帰るんだけど」
「俺もだよ」
長谷川がおかしそうに言うから、なんだか私が自意識過剰みたいじゃん!
いや、実際ちょっと自意識過剰だったんだけど!
「お先でーす」
「お疲れさまです」
課長に会釈して、二人で執務室を出た。
……そういえば、先週末も長谷川と一緒に帰ったな。
どっちも、たまたまなんだけど。
「そういえば、立花が勧めてくれたコーヒースティック詰め合わせ、飲んだ」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ甘かった」
「そりゃそうだ」
「おかげで目が覚めたわ」
「長谷川でも眠くなることとかあるんだね」
「俺をなんだと思ってるんだ?」
「モラハラ鉄面皮……だった」
「だった?」
「最近丸くなったって聞くし。よかったね」
「……そうだな」
初夏の穏やかな風が吹き抜ける。
それと同じくらい長谷川の声も穏やかで、さっぱりしてるのに妙にこってりした梅酒が似合いそうな声だった。
長谷川と少し喋ってから、紫くんは私の隣にドカッと座った。
「お疲れさまでーす。そういえば最近、長谷川さん丸くなりましたよね」
「そうだね。ところで定時過ぎたし、私は帰りたいから自分の席に戻りな?」
「いや、一箇所ひどい目にあったんですよ。慰めてくださいよ」
「彼女にでも言え」
「いないから先輩にお願いしてるんじゃないですか!」
「うるさ……」
紫くんが戸部先輩の席でぐちぐち不満を垂れ流すのを聞き流しつつ、長谷川に頼まれたお客様先への日程調整の連絡を入れる。明日は丹沢先輩とお客様先へ行くから、資料ができているか確認して先輩に送って……。
「これ、問題ないから入力よろしく」
私と紫くんの間にスッと書類が差し出された。
何かと思えば長谷川で、さっきお客さんと調整した資料だった。
「了解」
受け取ると、長谷川は紫くんをジロッと睨んだ。
「お前はだべってねえで仕事しろ」
「は、はいっ」
紫くんが慌てた顔で自席に戻っていった。
改めて渡された書類を見ると、付箋に「入力後、俺にも一度回してくれ」と書いてあった。
「いや、口で言いなよ」
「うるせえのがいたからな。……あいつに何か用事あった?」
「ないよ。席に返してくれて助かったけどさ」
「だろ」
長谷川はニヤッと笑って、自席へ戻っていった。
なんだ……?
ともかく入力を済ませて長谷川にメールしようとしたところで、今度は丹沢先輩がやって来た。
帰りたいんだけど。
「さっきの資料確認した。問題なしだから印刷しといて」
「了解です」
「嫌そうでウケる。明日でいいよ。行くの午後だし。俺ももう帰るし」
「んー、一応印刷してから帰ります。こういうのって、明日に回すと紙とかインクとか切れてたりするじゃないですか」
「あるある。でも遅くならないうちに帰りなよ。いくらウワバミとは言え女の子だし」
「ウワバミ関係ないですよ……」
あはあはと笑いながら去っていく丹沢先輩を見送って、長谷川にメールしてからプリンターへ向かった。
お客さんの分と私たちの分、それに予備まで印刷して振り返ると、部署の人数はだいぶ減っていた。
ぐぬ……週の頭から遅くまで働いてしまった。別に女の子って歳じゃないからいいけど、逆に疲れが抜けにくいから、できれば早く帰りたい。
資料をファイルに突っ込んで、パソコンの電源を落とす。
立ち上がったところで、長谷川と目が合った。
「……帰るんだけど」
「俺もだよ」
長谷川がおかしそうに言うから、なんだか私が自意識過剰みたいじゃん!
いや、実際ちょっと自意識過剰だったんだけど!
「お先でーす」
「お疲れさまです」
課長に会釈して、二人で執務室を出た。
……そういえば、先週末も長谷川と一緒に帰ったな。
どっちも、たまたまなんだけど。
「そういえば、立花が勧めてくれたコーヒースティック詰め合わせ、飲んだ」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ甘かった」
「そりゃそうだ」
「おかげで目が覚めたわ」
「長谷川でも眠くなることとかあるんだね」
「俺をなんだと思ってるんだ?」
「モラハラ鉄面皮……だった」
「だった?」
「最近丸くなったって聞くし。よかったね」
「……そうだな」
初夏の穏やかな風が吹き抜ける。
それと同じくらい長谷川の声も穏やかで、さっぱりしてるのに妙にこってりした梅酒が似合いそうな声だった。