八年越しの初恋、回収します。〜私のトリコになった部下に、八年前から溺愛されています〜



※

結婚式を終えた、その夜。

鳳凰富士ホテルの最上階にあるペントハウス。
一級の骨董品に囲まれた、豪華な特別室。

僕はフランス製のガラスシェードランプだけを灯し、部屋の電気を消していた。

テラスに続く窓を開け放ち、外を眺める。

僕の視線の先には、満月に照らされる富士が、夜の空に絵画のごとく浮かび上がっていた。

瞳子さんと僕を引き合わせた、神聖なる御山──。

本日、瞳子さんと僕の結婚式が無事に終わった。

八年越しの念願の夢が叶った日。

幸せを感じると同時に、今までの人生を振り返り、感傷に浸っていた。

部屋の入り口の扉が閉まる音と同時に、愛しい瞳子さんが入ってきた。

僕はゆっくりと立ち上がって出迎える。

「李人くんと積もる話は楽しめましたか?」

「ええ。李人は大人になったわ。まるで別人みたいよ」

「まさに、可愛い子には旅をさせよ、ですね。瞳子さんが李人くんの背中を押してあげたから、彼も成長できたのでしょう」

「私、そんな大それたことしてないわ」

瞳子さんは嬉しそうに照れていた。

僕はそんな瞳子さんの手を引き、窓辺へ誘った。

「すごい……なんて幻想的な富士……」

「ええ。瞳子さんの次に美しいですね」

瞳子さんの背後から、彼女を抱きしめる。

抱きしめる僕の腕に、瞳子さんの温かな手が触れる。

「あなたはいつだって私に優しいのね」

「当然です」

「……ねえ。本当はずっと前から、私のこと知っていたんでしょう?」

もやしっ子がバレた??

心臓が跳ね上がってしまう。

ここまできて、動揺してバレることは避けたい。
いつも通り、冷静に答えた。

「どうしてですか?」

「祐二が口座を作りに持ってきたあの名刺、私が新人の時に限定で使っていたものなの」

「ああ、確か富士山のかわいいイラストが入ってましたね」

「そうよ。なぜ、八年も前の名刺を持っていたの?」

(八年前……)

あの日、富士山の山頂で僕に名刺を差し出す瞳子さんを思い出す。

「……内緒です」

僕は小さく笑みをこぼす。

「もう……写真といい、祐二は私に秘密が多いわね」

瞳子さんは少し拗ねたような声で訴える。

それが可愛くって、たまらない。

彼女を半回転させ、正面から抱きしめた。

「瞳子さんには、かっこいい僕だけを見てほしいので」

「祐二には惚れてしまうわよ。でも、祐二が七つも年上の私に惚れた理由、知りたいわ」

「僕には七つもハンデがあったから、頑張ってこれたんです」

僕だって本当のことを伝えたい。
しかし、あの情けない泣き虫の姿は見せたくない。
ただでさえ七つも年下なのだから。

「瞳子さんの前では、立派な紳士でいさせてください」

瞳子さんが欲しくて待ちきれない僕は、彼女のシフォンのブラウスのボタンを一つずつ外してゆく。

彼女は俯いて恥じらいながらも、幸せにあふれ、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべていた。

彼女のブラウスが、音もなくふわりと床に落ちる。

「……祐二、愛している」

瞳子さんが潤んだ瞳で呟く。

「僕は出会った頃からずっと愛しています」

「もう、祐二は大袈裟なんだから……」

半身が露わになった瞳子さんを、強く抱きしめた。

「僕は永遠に、瞳子さんのトリコです」

彼女の頬は涙に濡れている。

声は出さずに、ただ僕の胸の中で頷く。

そして、そのまま二人でベッドに沈んでいった。

僕が瞳子さんのトリコになった件。

真相は、僕の心の中で永遠に生き続ける。





    ▷ FIN ◁







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