偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています

「本当に嬉しい」

耳元で囁かれてドキドキしてしまう。

長い間抱き締められていたが、
榊さんが名残惜しそうに離れたあと、
「でも、ちょっと気になることがあって…」と言い始めた。

「なんですか?」

私はドキドキしながら聞いてみた。
ーやっぱり何か問題があるのかな?

「楓さんは、結婚願望はないのかな?」

「え…?」

「さっき、『すぐに結婚しなくて良い』と言ったとき安心そうにしていたから」

少し拗ねたようにも見える表情の榊さんがいた。

そんな表情もするんだ。

「いえ、そちらに安心したというより、榊さんと釣り合う人といずれ結婚しないといけないのではと思ったのが、
そうではなくて安心したんです」

「そうですか」

榊さんは安堵の表情を浮かべているが、
まだ不服そうにも見える。

「どうかしましたか?」

「俺は…結婚願望ありますからね。
というか出てきたというか」

「そうなんですか?」

「はい。楓さんと付き合えただけで嬉しい気持ちはもちろんありますが、
結婚前提で付き合っていただきたいです。

もちろん、楓さんがまだ結婚について考えてないのもわかってます。
ある程度は待つ気持ちはありますが…」

ーある程度?
少し疑問に思うこともあったが、
それよりも髪を撫でられながら顔を近付けられ、それどころではなかった。

「結婚を意識してもらえるよう頑張るので…覚悟してください」

妖艶に微笑まれてどんな表情をしていいかわからなかった。

ただ顔が真っ赤になっているのはわかる。

榊さんはそんな私の顔を見て満足にそうにして、
「今まで…気持ちを頑張って隠してたからね。覚悟してね」と髪にキスをされた。

私はなんと言っていいかわからず、
更に顔を赤くして俯いた。

「じゃあ、送っていくね」

私の髪を撫でたかと思ったら、
シートベルトをつけてくれて、私の家まで車で送ってくれた。

ーこのままでは心臓がもたない。

どうにか気持ちを落ち着けたかったが、
結局家について一人になるまでは、
ずっと心臓の音がうるさかった。
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