矢神さん僕の事誘ってます⁈
「そうですか…つい僕の趣味に合わせてもらってしまって…矢神さんに自分の好きな物を知って欲しくて突っ走り過ぎてしまいました」



松木さんはやはり感じの悪くない良い人だと思う…少し突っ走る所はあるけれど、子どものようにはしゃぐ松木さんが悪いわけではない…



松木さんは私の横で足を組んで真っ直ぐに私を見つめて真剣な顔をしている…



「松木さんが悪い訳ではありません…ただ…私は松木さんの趣味には合わせられなくて…私が悪いんです…ごめんなさい…」



真剣に私を見つめる松木さんに私は同じくらい真剣に自分の気持ちを伝えなければと思った…



松木さんは歳は三つしか違わないけれど、大人の男性だ…私の口を濁したような言い方で、私の真意が分かったようだった…



「そうですか…それは残念です…僕とは合わない、お付き合いできないという事ですよね⁇」



「はい…ごめんなさい…私は松木さんとは付き合えません」



やはり真剣に真っ直ぐに私を見つめる松木さんにきちんと返事をしなければと思い、私は松木さんに正直に思いを打ち明けた



松木さんはボトルキープしてあるお気に入りのワインを一口口にして残念そうに下を向いて項垂れた



夜のワインバーには私たちの他にも数人のお客がいて男女でワインを飲みながら静かな落ち着いた雰囲気で話しをしながら飲んでいる…



「分かりました…でも、もし良ければ時々こうして会って話をする友達になるというのはどうでしょう⁇」



松木さんの驚くような言葉に私を目を丸くした



自分の中には友達になるという選択肢はなかったからだ



私は何と答えて良いのか分からずに少し考えたように下を向いて沈黙してしまった



「それもダメですか⁇」



松木さんはやはりガックリと肩を落としている…



「ダメと言う訳ではありません…でも、私の今までの人生に男友達と呼べる人がいた覚えがないので、少し戸惑ってしまいました」



「それなら尚更僕達は友達になりましょう」



松木さんの言葉にはいやらしさも下心も感じず、そのままの意味が含まれているような気がする…



「そうですね…時々会って話す友達…悪くないかもしれません」



意を決して言った言葉に私の勇気と少しの決意が含まれている



結局松木さんと私は友達としてたまに連絡を取り合う事になり、私達は恋愛関係に至る事はなかった…



人と恋愛をする事は難しい…私は人が人と付き合い、恋愛関係に発展することへの難しさを感じた…



お酒を飲んだ私達はタクシーを呼んで帰る事になった…



タクシーの中で松木さんは話を盛り上げようと友達の話をしたり、スポーツカー以外に自分が好きな事など、沢山話をしてくれた…



「それではまた…」と私を自宅まで送り届け、松木さんは帰って行った…



松木さんを見送ったあと、ハーと大きな溜息をついた私はドップリと疲れが押し寄せてガックリと肩を落とす…



恋活って何て疲れるんだろう…こんな調子で私は良い相手に巡り会えるのかな⁇



ふと夜空に目を向けると、月が綺麗に光っている…私はタクシーを降りてからも少しの間、綺麗に輝く三日月を眺めた…
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