矢神さん僕の事誘ってます⁈
週末の飲み屋はそこそこ混んで仕事帰りのサラリーマン達で賑わっていた…



席についた僕達は腹を割って話そうとビールを頼んだ…

 

気まずい雰囲気のなか、先に口火を切ったのは僕の方だった…



「単刀直入に聞くけど、光莉と別れ話をしているって言うのは本当なのか⁇」



直球に聞いた僕の言葉には何の躊躇いもない…兄貴は僕の言葉に項垂れたように首をガックリと落として落ち込んでいる…



「ああ…本当だ…俺が浮気したと勘違いして、由也と一緒に出て行った…」



兄貴の言葉は意外なものだった…兄貴は光莉とはただ喧嘩しただけだと言い、由也が僕の子どもである可能性なんて微塵も疑っていなそうだった



「兄貴に聞きたい事がある…由也が僕の子どもである可能性はあるか⁇」



「はぁ⁈」兄貴は僕の言葉が突拍子もないもので、意外で仕方ないようだ…



「そんなわけないだろ⁇由也は正真正銘俺の子だよ⁉︎」



兄貴は由也を自分の子と疑わず、全く信じていないようだ…



「でも、光莉がこの前僕のところに来て言ったんだ⁉︎光莉は由也は僕の子だって言ってた⁉︎血液型も僕と同じB型だって…」



僕の話に、兄貴は驚いたような顔をしたが、少し考えている…「それはないな…由也は間違いなく俺の子だよ‼︎それに、由也の血液型はB型じゃない…俺と同じO型だ」



「えっ⁉︎」 



兄貴の言葉に僕は驚いた⁈それが本当なら光莉は僕に嘘をついた事になる…



「大方俺への当て付けのためにお前に会いに行って嘘をついたんだろう…由也の血液型は怪我をした時に調べたから本当だし、由也が俺の子なのは、生まれた時にDNA鑑定までして調べたから確実だ⁉︎だからお前の子な筈がない…」
   


兄貴の言葉に腰が抜けそうに拍子抜けする…僕はまんまと光莉の嘘に振り回されたのだ…ほっとしている僕に兄貴が僕のグラスにビールを注ぎ足した



「俺なりにお前にずっと謝らなきゃと思ってた…まるで略奪するように光莉と結婚したから、お前はさぞかし俺を憎んでいるだろうと思って今まで連絡できなかった…光莉はお前と付き合ってたのに、奪い取るように光莉と結婚して悪かった…」



兄貴の懺悔にも似た言葉に目を丸くして驚いた…僕のイメージする兄貴は昔から僕に謝ったことなんか一度もなかったからだ…



「今更謝られてもな…」 



苦笑したようにそう言ったけど、兄貴の初めての謝罪に過去の事をもう許せている自分がいた…



結局兄貴とは二時間くらいビールを飲んで喋り、「じゃあまた…兄貴も早く光莉と仲直りしろよ⁉︎もう僕を巻き込むな」と言ってあっさりと別れた…



今まで疎遠になっていた兄貴と蟠りが解け、スッキリとした気持ちになったが、同時に光莉と兄貴の痴話喧嘩に巻き込まれただけの自分が本気で愚かに見えて、心底嫌になった…



ふと、菜子さんの可愛い笑顔を思い出して、無性に菜子さんに会いたくなった…でも、そんな自分勝手な事が言える訳もなくて、後悔したように1人飲み屋の帰り道をトボトボと帰った…
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