キミと出会えた、あの日から

キミのこと...

朝の道端は、まだ人通りもまばらで、冷たい空気が頬を刺していた。

凛花(りんか)はスマホを片手に、少し急ぎ足で学校に向かっていた。

今日も授業の準備を思い出しながら歩いていると、前方でふと何かが転がる音がした。



振り向くと、見知らぬ少年が小さな紙袋を手にして立っていた。

しかし、袋はどうやら重かったらしく、うっかり手から滑り落ち、地面に転がった。

「わっ!」

思わず声を上げる凛花。

少年も慌てて袋を拾おうとするけれど、手元が安定せず、袋の中身がちらちらと飛び出してしまう。



凛花は迷わず駆け寄り、紙袋を拾って少年に差し出した。

「大丈夫?はい、どーぞ!」

少年は一瞬驚いた顔をした後、少し照れくさそうに笑った。

「ありがとう…助かる。」

その笑顔は、自信と余裕を感じさせるけれど、今は少し焦っている様子もあった。

「よかったら、名前、教えてくれる?」

凛花の質問に、少年は首をかしげる。

「えっと…、竜輝(りゅうき)。」

凛花も少し緊張しながら、自分の名前を告げる。

「私は凛花。よろしくね」

「凛花か...いい名前だね。よろしく」

袋を握り直す竜輝の手元を見ながら、凛花の胸が少し高鳴った。

――なんだか、この出会いは特別かもしれない。



二人は少し並んで歩きながら、ぎこちないけれど自然な会話を始めた。

「この道、よく通るの?」

「うん、学校までの近道だから。竜輝は?」

「俺はたまたま。急いでたら、袋がちょっと重くて…、焦ったよ」

慌てながらも笑う竜輝に、凛花は思わず微笑む。

「でも、助けてくれてありがとう」

「いいよ、だって、誰でも助け必要なことあるでしょ?」

ふとした瞬間、凛花は竜輝が強気で頼れるけれど、少しドジで可愛い一面もあることに気づいた。

「また会えるかな?」

竜輝が軽く笑いながら聞く。

凛花は自然に頷いた。

「うん、またね」

道端で偶然出会った二人の関係は、まだ名前を交換しただけの、ほんの小さな始まりに過ぎなかった。

けれど、凛花の心には、竜輝のことをもっと知りたい、と思う気持ちが芽生え始めていた。




あれから数週間が経ち、秋も深まる頃、学校の文化祭が近づいていた。

凛花は友達と一緒に準備をしている最中、ふと、出店を見て歩いていた。

その時、視界の隅にあの顔が映った。

あれ、竜輝?

思わず目を凝らすと、校庭の向こうに、あの時の竜輝がいるのが見えた。

竜輝もこちらに気づいたのか、ちょっと驚いた顔をしたあと、少し照れたように笑った。

「おお、凛花!久しぶり!」

「え、竜輝!?こんなところで!」

凛花は思わず声を上げると、竜輝も歩み寄ってきた。


「文化祭、楽しんでる?」

「うん、楽しんでるよっ!」

「会うの久しぶりだよなー」

竜輝は軽く肩をすくめながら、でも、どこか嬉しそうに言った。

その様子に、凛花は心の中で少しドキドキしていた。

「久しぶりに竜輝に会えて良かった...」
「あの朝から一回も会ってなかったんだもん!」

凛花は笑って、ほんの少し照れくさく言った。

文化祭の準備も忙しいが、二人は少し立ち話をして、最後にこう言った。

「凛花の連絡先教えてくんね?」

「うん、いいよ〜!」

連絡先を交換した二人は、また次に会うことを約束し合った。



その後、二人はメッセージでやり取りを始めた。

最初は、文化祭の感想を交換し合うだけの軽い会話だった。

でも、だんだんとお互いのことをもっと知りたくなり、会話は次第に深くなっていった。

「文化祭楽しかったね!」

「うん!あの出店、お前も楽しんでたし、良かったな。」

「なんだか、リューキって実は意外と優しいんだね。」

「お前、最初に会った時、俺が冷たいと思った?」

「ううん、そういうわけじゃないけど、いや...でも、なんか塩な感じがして...」

「それは、すまん!初対面だったから...。」

そんなやり取りの中で、だんだんとリューキの素の部分が見えてきて、凛花は少しずつ彼に惹かれていった。

ある日、こんなメッセージが来た。

「ねぇ凛花、文化祭も楽しかったけど、今度一緒に遊びに行かない?」

「え、ほんとに?」

「うん、もちろん!テスト終わったら遊びに行こうよ!」

「いいの、やったぁ!」

凛花はすぐに返信して、心の中で少しドキドキした。

初めて、本当に会う約束をしてしまったからだ。


数日後、凛花はまたリューキからメッセージをもらった。

「ねぇ、遊びに行く日どうする?」

「うーん、テスト終わった次の日とか?」

「おけ!じゃあ凛花、何したいか考えておいてちょーだい!」

「うん、よく考えておくね!めっちゃ楽しみ!」

二人は初めてのデートの約束を交わした。

テストが終わったら、お互いにとって特別な時間が待っている。


そのとき、凛花の気持ちは不思議なくらい宙に浮かんでいた。



――あぁ、早くその日が来ないかな...。
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