推し似の鬼と7人の神様!!
神出鬼没な七人の神様と鬼(推しと同じ顔)に出会いました
四字熟語ってしってる?
四つの漢字で作られた言葉なんだ。
四つの漢字が重なって初めて意味がわかるっていうすごい武器でしょ。
ことわざや故事成語ってしってる?
知恵がたくさんつまった昔の人からの贈り物の言葉。
これを知ると日本語がもっとよくわかるようになるんだよ。
漢字は部首が組み合わさって意味を成す。
日本語って神秘的で美しくて面白いんだ。
この学校には四時四十四分に旧校舎のトイレに行くと花子さんではなくて鬼がいるらしいという噂を知っている?
なんでもねがいをかなえてくれるらしい。その代わり、大事なものを差し出さなければいけないとか。
この話を聞いてから、私はずっと気になっていた。
鬼に会ってみたいと願ってしまった。
この町には昔鬼が住んでいたという歴史があって、祭では鬼の像を祭っていたり、観光客も鬼目当てで来るのだから、真実味がある。
なぜ鬼に会いたいのかというと、最近ハマったアニメに鬼が出てきてめちゃくちゃかっこいいという理由なんだけど。
もし、本当に鬼に会えたら少しでも推しに近づけるんじゃないかと思ったのが始まりだ。
たしかに昔話の鬼とアニメの鬼は全然違うけど、彼の先祖かもしれないと私はルーツが知りたくなった。
鬼の町に住んでいるのも何かの縁かもしれない。
最近、友達とうまくいっていないことも大きい。
学校には行きたくないけど、親には行けって言われるし、授業もついていけないと高校入試が大変だろうし。
仕方なく登校してるけど、つまらない毎日。
中学生は何かと大変だと思う。
友達関係で悩んでいた時に出会ったのが、アニメのキャラ。
推しである鬼の美男子だった。
ストーリーは角が生えたアイドルが、鬼ということを隠して人間界で生活をするという話。
声もドストライクで沼にハマってしまった。
アニメの鬼の名前は鬼沢くん。
こんなかっこいい男子なんてこの中学にはいない。
わかっていることなんだけど、人間じゃない鬼に会ってみたくなった。
もしかしたら友達の代わりになってくれるかもしれない。
淡い期待があったのは事実だった。
緊張で体が凍てつく。
ついに、今日の放課後鬼に会おうと旧校舎のトイレに来てしまった。もうすぐ四時四十四分。
四がたくさんならぶと死を連想させるからかもしれないけど、不吉な予感がする。
でも、私の推しは鬼。会えるならば仕方がない。幸せの四だと思おう。
時間だ。
「鬼さんこちら、手のなるほうへ」
これがこの学校の噂の合言葉。実際こわいからこれを実践した友達はいない。私って勇者みたいじゃない?
手を拍手して鳴らす。誰もいない旧校舎に拍手だけが鳴り響く。正直不気味だ。
すると、不思議なことに光と共に鬼が出てきた。
半信半疑だったけど、そんなことが起こるとは想像外だった。
驚いたことに、彼は私の推しキャラとそっくりな鬼だった。
第一印象は、怖いよりもかっこいいという気持ちが先だった。
なぜならば推しと顔立ちがそっくりだったから。
顔面蒼白な印象だが、そこは推しと同じ青鬼だからといえばあまり違和感はない。
「俺の名前は森羅万象の鬼、悪鬼羅刹。俺を呼んだのはお前か?」
思ったよりも若いし、年も近いような気がする。声も推しと似ている。ちょっと一目ぼれ感あるな。
難しい言葉で、出鼻をくじかれた。かなり特殊な名前。もしかして四字熟語が名前なのでは。
「しんらばんしょう? あっきらせつ?」
思わず疑問形で答えてしまう。
「森羅万象とは、この世に存在する全てのもの。悪鬼羅刹っていうのは、人に害を与える化け物っていう意味だが。俺に何か用か?」
「実は鬼に会ってみたかったの。私の推しが鬼なので、一度会いたかったんです」
正直に答えた。
表情があまりない悪鬼羅刹は角があり、明らかに鬼ではあったが、人間の中学生くらいの大きさで、人間に近い印象だ。
見た目が鬼沢くんそのものだった。
「推しね。まぁいい。どうせねがいがあるから呼んだんだろ。ねがいはなんだ? 人間は欲望の塊だからな。その代わりお前から大切なものを奪わなければいけないが」
「友達がほしいなって。私の推しがアニメの鬼なんです。だから、実物に会ってみたくて」
理解できないような顔をして鬼はくびをかしげた。
「というかあなた、推しにそっくりなので驚いてます」
「鬼のことが怖くないのか?」
「怖くないですよ。むしろ大好きです」
奇妙な顔をされる。鬼が好きだという人はそんなに珍しいことなのだろうか。
「万物流転っていう言葉を知ってるか? これは、この世に存在するものは全て変化し続けるってことだ。どうせ推し変するんだろ。さて、鬼を呼び出した君には何を差し出してもらうかな」
少し笑いながらも鬼の瞳の奥はとても冷たい印象だ。
これは、命と言わなければいけない展開では?
でも、まだこの歳で死ぬわけにはいかないし、体の一部をあげるわけにもいかないし。
「もしよければ、推しのグッズでいいかな? 私の体の一部のようなものだし」
これは、結構譲歩してるんだけど。
「ふざけてるのか。俺は君の心をもらいたい。もう、他の人に恋愛感情は抱けないけど、それでもいいか?」
「ものすごーく怖いこと言ってるよね。人の心を支配しようとするなんて」
推しに似た鬼に怒るなんて変な感じ。
でも、こんなこと夢か何かかもしれない。
「でも、もう君は俺に恋してるんじゃないのか?」
そう言われると、私は何も言えなくなる。恋かどうかはわからないけど、動揺しているのは図星だったから。
外見がすごく好みなだけ。彼の内面は全然わからないけど、心臓はばくばくだった。
でも、この鬼に恋愛感情があるとは思えない。
「俺は相棒を探していた。人間になるためにね」
そう言うと、鬼はしたたかに笑う。まるで、すべてを計算していたかのように。
「いずれ鬼籍に入らないか?」
突然に言われる。
ドキリとする。
「戸籍ならわかるけど。もしかして、プロポーズ? 結婚するときに入籍するんでしょ」
「まぁいい」
やっぱり鬼は不気味でつかみどころがない。
スマホで調べてみると。ガーンという言葉がのしかかる。
「鬼籍に入るって、死ぬってことじゃない? 鬼の籍って怖い。推しでも鬼籍はムリムリ」
慌てる私を見て、鬼は笑う。この人の笑みはどこか大人びていて本気じゃない笑いだ。
「鬼に関する日本語ってすごくたくさんあるんだよ。ことわざ、四字熟語、慣用句。鬼とか神を使った言葉って結構あるだろ」
「国語では習ったことがあるけど、たくさんありすぎて全部はわからないけどね」
「神出鬼没っていう言葉知ってるだろ。この学校には神出鬼没の七福神の少年がいる。そいつら全員に勝つと俺は人間になれる。協力してくれないか?」
七福神の噂って本当だったんだ? 鬼のほうが有名だから、この学校の噂では影が薄いけど、神っていうんだからきっといい人なのかな。
「いいけど、何をすればいいの?」
「あいつらは暇人男子だから、頭脳戦をして、相手から対価に福をもらう」
「何してるのか不明だったけど、暇人だったんだ。なんか納得。少年なの? 七福神って、たしかおじいさんと女性が一人いたよね」
「ここに住み着く七人の神様。あいつら全員見た目十代。神様は老けないらしい。弁天のポジションもたしか男子」
この学校の七福神って意外と若いんだ。あなどれないな。
「たしかこのあたりに大黒天がいるって聞いたんだよな。旧校舎の金庫の部屋。昔の校長室」
「打ち出の小づちとか持ってる人でしょ。いい人そうな印象だよね」
「あいつは昔ワルだったらしい。全身黒づくめのホストみたいな奴だから気をつけろ」
「ホスト? 夜の街で女性とお酒を飲むような仕事。神様は想像の斜め上をいくのね」
想像の斜め上をいく七福神を想像してみる。
耳元で囁く声がする。
声優の誰かに似てるなと思うような声質。
どこか心がざわつくような声が響く。
「ホストだなんて心外だな。俺はかわいい女の子とお金が好きなだけなのに」
「でたな、大黒天」
羅刹は構えた。
「俺は大黒天。昔はたしかに悪い時期もあったかもしれないけど、今は福の神だし」
たしかに、見た目は黒いスーツを着こなしたスタイルのいいチャラそうなイケメンだった。
これが神様? なんでもありな設定に戸惑う。
不良が少し落ち着いた時期、みたいな設定なのだろうか。
「金庫に住み着くとは金が好きな神様だな。俺は、七福神と戦って人間になる」
「鬼の羅刹じゃないか。久しぶりだな。俺は、隣の女の子に興味あるんだけど」
ウィンクされた。しかも、何気に深紅のバラを持っている。キザな印象だ。
かっこいいのは認めるけど、好きになるタイプとは違うかな。
こういったお金と女の子が好きな男の人を好きになってしまったら、幸せになれなそうな気がする。
でも、思っていたのとは全然違う七福神と頭脳戦みたいなことをするなんて。
自信ないな。
「お金にまつわる面白いことわざの話聞かせてよ。俺の担当はことわざなんだよね」
お金にまつわるあたり、大黒天らしいな。
「じゃあ、時は金なり。光陰矢のごとしについて解説してやろうか」
羅刹が牙をむく。
「たしかに、時間は普通の人間にとっては有限だから、時は金に当てはめて言うけど。俺らって時間が無限だからさぁ。俺らには説得力がないっていうかぁ」
黒に身を包んだ生意気ホストが何か言っている。神様だなんて思わないようにしよう。
「君、羅刹なんかに利用されてるけどいいわけ? 羅刹を呼んだのは人間の女の子だろうけど、命を取られるなんて思ってないんだろ。鬼が人間になるには人間の命をもらうっていう方法もあるからね」
「ちょっと、そんな話は聞いてないんだけど」
寝耳に水だ。
「心配するな。おまえから命をもらう気はないから」
羅刹はにこりとする。
「俺たち七福神には、それぞれの担当がある。頭脳戦で俺たちと戦えば、ねがいをかなえることができる」
「神様に勝つって結構難しいんじゃない?」
羅刹に素朴な疑問を投げかけると、初めて聞く声が聞こえる。
「たしかに、難しいよね」
美しい紅色の髪がなびく。バラの花びらを大黒天から奪い、自らに花びらを散りばめる。女性的な男性が現れた。
「僕の名前は弁天。よろしく」
なんだか華やかだ。正月に見かける絵とは全然違う。
紅色の髪の毛が美しく、一瞬男装した女性かと思った。
つややかな唇と憂いをおびた瞳。
なんだか惹き込まれるような気がした。
「俺は弁天。幸せを分け与えることができるお金を呼ぶ神様。趣味はコイバナ。四字熟語担当」
趣味はコイバナっていうのも斜め上をいく神様だなぁ。
「弁天とは仲良くしないとな。俺はお金が好きだからさぁ」
大黒天はやはり、クズだな。
すると続々と知らない男性が部屋に入ってくる。
「俺は恵比寿。海の神様でもある。かわいい女の子は大歓迎。故事成語担当」
なんだかサーファー風のいでたち。海にいそうなチャラそうな印象。
水着の女の子に声かけてるんじゃないかなって思ってしまう。
「俺は福禄寿。通称フクロク。南極星の化身。寿命の神様やってます。星座担当」
この人は優しそうな天文男子っていう印象。
この中ではかなりまとも枠。
「俺は寿老人。老人っていうけど、見た目は十代。シルバーの髪がトレードマーク。老人って言うと老けた感じがするから、ジュって呼んでね。子孫繁栄の神様。俺と話すと妊娠しちゃうかもよ。保健担当」
鹿を連れている。
相変わらず全員ぶっとんでるな。
まるでホストクラブに来たみたい。
とはいってもホストクラブに行ったことなんてないんだけどね。
「保健担当ってなんだよ。俺は毘沙門天だ。武運の神なんで、この中じゃ一番強い。慣用句担当」
突っ込みながらも冷静。体育会系っていう感じの細いけど筋肉がちゃんとついてますっていう感じ。
戦えそうな勇者的な格好をしている。
なんだか強そう。
「布袋だ。予知能力の神様やってます。恋愛運でも予知しようか。漢字担当」
占い師みたいなミステリアスかつ優しそうな笑顔。
全員思っていたのと違うな。
神様らしくないし、若い。
私、感覚雄麻痺してるけど、これって普通じゃない空間に入ってしまった?
もう帰れないのかな。
楽しい空間なら、現実に帰らなくてもいいのかもしれない。
クラスの人よりもずっと話しやすい神様らしき男性。
しかも、全員美しくまぶしい光すら放っている。
なによりも推しと同じ顔をした鬼が人間になりたいと言っている。
これは協力してみよう。
この人たちとつながれば、現実世界も怖くないかもしれない。
だって神様なんだから、味方にしたら絶対に幸せになれるよね。
「俺たちの誰を一番好きになるか、試してみない?」
七人の神が楽しそうに提案する。
七福神が自分を一番好きになってくれたら、その人の幸せの力をくれると言い出す。
顔は悪鬼羅刹が一番好きなんだけど。
私は一体誰を選ぶことになるのだろうか。
四つの漢字で作られた言葉なんだ。
四つの漢字が重なって初めて意味がわかるっていうすごい武器でしょ。
ことわざや故事成語ってしってる?
知恵がたくさんつまった昔の人からの贈り物の言葉。
これを知ると日本語がもっとよくわかるようになるんだよ。
漢字は部首が組み合わさって意味を成す。
日本語って神秘的で美しくて面白いんだ。
この学校には四時四十四分に旧校舎のトイレに行くと花子さんではなくて鬼がいるらしいという噂を知っている?
なんでもねがいをかなえてくれるらしい。その代わり、大事なものを差し出さなければいけないとか。
この話を聞いてから、私はずっと気になっていた。
鬼に会ってみたいと願ってしまった。
この町には昔鬼が住んでいたという歴史があって、祭では鬼の像を祭っていたり、観光客も鬼目当てで来るのだから、真実味がある。
なぜ鬼に会いたいのかというと、最近ハマったアニメに鬼が出てきてめちゃくちゃかっこいいという理由なんだけど。
もし、本当に鬼に会えたら少しでも推しに近づけるんじゃないかと思ったのが始まりだ。
たしかに昔話の鬼とアニメの鬼は全然違うけど、彼の先祖かもしれないと私はルーツが知りたくなった。
鬼の町に住んでいるのも何かの縁かもしれない。
最近、友達とうまくいっていないことも大きい。
学校には行きたくないけど、親には行けって言われるし、授業もついていけないと高校入試が大変だろうし。
仕方なく登校してるけど、つまらない毎日。
中学生は何かと大変だと思う。
友達関係で悩んでいた時に出会ったのが、アニメのキャラ。
推しである鬼の美男子だった。
ストーリーは角が生えたアイドルが、鬼ということを隠して人間界で生活をするという話。
声もドストライクで沼にハマってしまった。
アニメの鬼の名前は鬼沢くん。
こんなかっこいい男子なんてこの中学にはいない。
わかっていることなんだけど、人間じゃない鬼に会ってみたくなった。
もしかしたら友達の代わりになってくれるかもしれない。
淡い期待があったのは事実だった。
緊張で体が凍てつく。
ついに、今日の放課後鬼に会おうと旧校舎のトイレに来てしまった。もうすぐ四時四十四分。
四がたくさんならぶと死を連想させるからかもしれないけど、不吉な予感がする。
でも、私の推しは鬼。会えるならば仕方がない。幸せの四だと思おう。
時間だ。
「鬼さんこちら、手のなるほうへ」
これがこの学校の噂の合言葉。実際こわいからこれを実践した友達はいない。私って勇者みたいじゃない?
手を拍手して鳴らす。誰もいない旧校舎に拍手だけが鳴り響く。正直不気味だ。
すると、不思議なことに光と共に鬼が出てきた。
半信半疑だったけど、そんなことが起こるとは想像外だった。
驚いたことに、彼は私の推しキャラとそっくりな鬼だった。
第一印象は、怖いよりもかっこいいという気持ちが先だった。
なぜならば推しと顔立ちがそっくりだったから。
顔面蒼白な印象だが、そこは推しと同じ青鬼だからといえばあまり違和感はない。
「俺の名前は森羅万象の鬼、悪鬼羅刹。俺を呼んだのはお前か?」
思ったよりも若いし、年も近いような気がする。声も推しと似ている。ちょっと一目ぼれ感あるな。
難しい言葉で、出鼻をくじかれた。かなり特殊な名前。もしかして四字熟語が名前なのでは。
「しんらばんしょう? あっきらせつ?」
思わず疑問形で答えてしまう。
「森羅万象とは、この世に存在する全てのもの。悪鬼羅刹っていうのは、人に害を与える化け物っていう意味だが。俺に何か用か?」
「実は鬼に会ってみたかったの。私の推しが鬼なので、一度会いたかったんです」
正直に答えた。
表情があまりない悪鬼羅刹は角があり、明らかに鬼ではあったが、人間の中学生くらいの大きさで、人間に近い印象だ。
見た目が鬼沢くんそのものだった。
「推しね。まぁいい。どうせねがいがあるから呼んだんだろ。ねがいはなんだ? 人間は欲望の塊だからな。その代わりお前から大切なものを奪わなければいけないが」
「友達がほしいなって。私の推しがアニメの鬼なんです。だから、実物に会ってみたくて」
理解できないような顔をして鬼はくびをかしげた。
「というかあなた、推しにそっくりなので驚いてます」
「鬼のことが怖くないのか?」
「怖くないですよ。むしろ大好きです」
奇妙な顔をされる。鬼が好きだという人はそんなに珍しいことなのだろうか。
「万物流転っていう言葉を知ってるか? これは、この世に存在するものは全て変化し続けるってことだ。どうせ推し変するんだろ。さて、鬼を呼び出した君には何を差し出してもらうかな」
少し笑いながらも鬼の瞳の奥はとても冷たい印象だ。
これは、命と言わなければいけない展開では?
でも、まだこの歳で死ぬわけにはいかないし、体の一部をあげるわけにもいかないし。
「もしよければ、推しのグッズでいいかな? 私の体の一部のようなものだし」
これは、結構譲歩してるんだけど。
「ふざけてるのか。俺は君の心をもらいたい。もう、他の人に恋愛感情は抱けないけど、それでもいいか?」
「ものすごーく怖いこと言ってるよね。人の心を支配しようとするなんて」
推しに似た鬼に怒るなんて変な感じ。
でも、こんなこと夢か何かかもしれない。
「でも、もう君は俺に恋してるんじゃないのか?」
そう言われると、私は何も言えなくなる。恋かどうかはわからないけど、動揺しているのは図星だったから。
外見がすごく好みなだけ。彼の内面は全然わからないけど、心臓はばくばくだった。
でも、この鬼に恋愛感情があるとは思えない。
「俺は相棒を探していた。人間になるためにね」
そう言うと、鬼はしたたかに笑う。まるで、すべてを計算していたかのように。
「いずれ鬼籍に入らないか?」
突然に言われる。
ドキリとする。
「戸籍ならわかるけど。もしかして、プロポーズ? 結婚するときに入籍するんでしょ」
「まぁいい」
やっぱり鬼は不気味でつかみどころがない。
スマホで調べてみると。ガーンという言葉がのしかかる。
「鬼籍に入るって、死ぬってことじゃない? 鬼の籍って怖い。推しでも鬼籍はムリムリ」
慌てる私を見て、鬼は笑う。この人の笑みはどこか大人びていて本気じゃない笑いだ。
「鬼に関する日本語ってすごくたくさんあるんだよ。ことわざ、四字熟語、慣用句。鬼とか神を使った言葉って結構あるだろ」
「国語では習ったことがあるけど、たくさんありすぎて全部はわからないけどね」
「神出鬼没っていう言葉知ってるだろ。この学校には神出鬼没の七福神の少年がいる。そいつら全員に勝つと俺は人間になれる。協力してくれないか?」
七福神の噂って本当だったんだ? 鬼のほうが有名だから、この学校の噂では影が薄いけど、神っていうんだからきっといい人なのかな。
「いいけど、何をすればいいの?」
「あいつらは暇人男子だから、頭脳戦をして、相手から対価に福をもらう」
「何してるのか不明だったけど、暇人だったんだ。なんか納得。少年なの? 七福神って、たしかおじいさんと女性が一人いたよね」
「ここに住み着く七人の神様。あいつら全員見た目十代。神様は老けないらしい。弁天のポジションもたしか男子」
この学校の七福神って意外と若いんだ。あなどれないな。
「たしかこのあたりに大黒天がいるって聞いたんだよな。旧校舎の金庫の部屋。昔の校長室」
「打ち出の小づちとか持ってる人でしょ。いい人そうな印象だよね」
「あいつは昔ワルだったらしい。全身黒づくめのホストみたいな奴だから気をつけろ」
「ホスト? 夜の街で女性とお酒を飲むような仕事。神様は想像の斜め上をいくのね」
想像の斜め上をいく七福神を想像してみる。
耳元で囁く声がする。
声優の誰かに似てるなと思うような声質。
どこか心がざわつくような声が響く。
「ホストだなんて心外だな。俺はかわいい女の子とお金が好きなだけなのに」
「でたな、大黒天」
羅刹は構えた。
「俺は大黒天。昔はたしかに悪い時期もあったかもしれないけど、今は福の神だし」
たしかに、見た目は黒いスーツを着こなしたスタイルのいいチャラそうなイケメンだった。
これが神様? なんでもありな設定に戸惑う。
不良が少し落ち着いた時期、みたいな設定なのだろうか。
「金庫に住み着くとは金が好きな神様だな。俺は、七福神と戦って人間になる」
「鬼の羅刹じゃないか。久しぶりだな。俺は、隣の女の子に興味あるんだけど」
ウィンクされた。しかも、何気に深紅のバラを持っている。キザな印象だ。
かっこいいのは認めるけど、好きになるタイプとは違うかな。
こういったお金と女の子が好きな男の人を好きになってしまったら、幸せになれなそうな気がする。
でも、思っていたのとは全然違う七福神と頭脳戦みたいなことをするなんて。
自信ないな。
「お金にまつわる面白いことわざの話聞かせてよ。俺の担当はことわざなんだよね」
お金にまつわるあたり、大黒天らしいな。
「じゃあ、時は金なり。光陰矢のごとしについて解説してやろうか」
羅刹が牙をむく。
「たしかに、時間は普通の人間にとっては有限だから、時は金に当てはめて言うけど。俺らって時間が無限だからさぁ。俺らには説得力がないっていうかぁ」
黒に身を包んだ生意気ホストが何か言っている。神様だなんて思わないようにしよう。
「君、羅刹なんかに利用されてるけどいいわけ? 羅刹を呼んだのは人間の女の子だろうけど、命を取られるなんて思ってないんだろ。鬼が人間になるには人間の命をもらうっていう方法もあるからね」
「ちょっと、そんな話は聞いてないんだけど」
寝耳に水だ。
「心配するな。おまえから命をもらう気はないから」
羅刹はにこりとする。
「俺たち七福神には、それぞれの担当がある。頭脳戦で俺たちと戦えば、ねがいをかなえることができる」
「神様に勝つって結構難しいんじゃない?」
羅刹に素朴な疑問を投げかけると、初めて聞く声が聞こえる。
「たしかに、難しいよね」
美しい紅色の髪がなびく。バラの花びらを大黒天から奪い、自らに花びらを散りばめる。女性的な男性が現れた。
「僕の名前は弁天。よろしく」
なんだか華やかだ。正月に見かける絵とは全然違う。
紅色の髪の毛が美しく、一瞬男装した女性かと思った。
つややかな唇と憂いをおびた瞳。
なんだか惹き込まれるような気がした。
「俺は弁天。幸せを分け与えることができるお金を呼ぶ神様。趣味はコイバナ。四字熟語担当」
趣味はコイバナっていうのも斜め上をいく神様だなぁ。
「弁天とは仲良くしないとな。俺はお金が好きだからさぁ」
大黒天はやはり、クズだな。
すると続々と知らない男性が部屋に入ってくる。
「俺は恵比寿。海の神様でもある。かわいい女の子は大歓迎。故事成語担当」
なんだかサーファー風のいでたち。海にいそうなチャラそうな印象。
水着の女の子に声かけてるんじゃないかなって思ってしまう。
「俺は福禄寿。通称フクロク。南極星の化身。寿命の神様やってます。星座担当」
この人は優しそうな天文男子っていう印象。
この中ではかなりまとも枠。
「俺は寿老人。老人っていうけど、見た目は十代。シルバーの髪がトレードマーク。老人って言うと老けた感じがするから、ジュって呼んでね。子孫繁栄の神様。俺と話すと妊娠しちゃうかもよ。保健担当」
鹿を連れている。
相変わらず全員ぶっとんでるな。
まるでホストクラブに来たみたい。
とはいってもホストクラブに行ったことなんてないんだけどね。
「保健担当ってなんだよ。俺は毘沙門天だ。武運の神なんで、この中じゃ一番強い。慣用句担当」
突っ込みながらも冷静。体育会系っていう感じの細いけど筋肉がちゃんとついてますっていう感じ。
戦えそうな勇者的な格好をしている。
なんだか強そう。
「布袋だ。予知能力の神様やってます。恋愛運でも予知しようか。漢字担当」
占い師みたいなミステリアスかつ優しそうな笑顔。
全員思っていたのと違うな。
神様らしくないし、若い。
私、感覚雄麻痺してるけど、これって普通じゃない空間に入ってしまった?
もう帰れないのかな。
楽しい空間なら、現実に帰らなくてもいいのかもしれない。
クラスの人よりもずっと話しやすい神様らしき男性。
しかも、全員美しくまぶしい光すら放っている。
なによりも推しと同じ顔をした鬼が人間になりたいと言っている。
これは協力してみよう。
この人たちとつながれば、現実世界も怖くないかもしれない。
だって神様なんだから、味方にしたら絶対に幸せになれるよね。
「俺たちの誰を一番好きになるか、試してみない?」
七人の神が楽しそうに提案する。
七福神が自分を一番好きになってくれたら、その人の幸せの力をくれると言い出す。
顔は悪鬼羅刹が一番好きなんだけど。
私は一体誰を選ぶことになるのだろうか。


