勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
 私のふたつ年上の二十八歳である彼女は、姉御肌タイプで言いたいことをはっきり口にできる人。童顔でのほほんとしている私は、お姉さんらしい彼女が少しうらやましかったりする。

 今も、約二年前に別れた元カレがイケメンムーブをかましてヨリを戻そうとしてきたことに怒りが収まらず、悪態をついている。

「私に彼氏がいない前提で言ってきたのも腹立つわけ。実際いないんだけど。いないんだけど、あんたに未練があって作らないわけじゃないっつーの!」
「まあまあ落ち着いて。皆聞いてるから」

 周りのおばさま方が、あきらかに興味津々な様子で耳を澄ませているのでどうどうとなだめた。

 でも、美桜が怒るのも無理はない。苦手な料理もがんばって覚えて、仕事で忙しいときもなんとか時間を作って会っていたのに、元カレは『俺、美桜に愛されてる感じがしない』と言い放ったのだから。精いっぱい尽くそうとしているだけでいじらしいのに。

「元カレは美桜を手放した時点で間違ってたんだよ。こんな魅力的な子と愛し合えたのは奇跡だったのに、気づくのが遅すぎたね」

 温泉の成分でぬるつく石にもたれかかって、あきれた調子で言った。美桜は目をぱちくりさせた後、私の首にがばっと抱きついてくる。

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