人生の岐路に立つとき

第一章 幸助の話-16

※本作は 文芸社より2026年7月に書籍化 されます。
応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。

30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。
母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。
どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。

それでも――
毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。

この作品は、
人生のどん底に落ちた男が、
どうやってもう一度立ち上がったのかという、
“再生の記録” です。

読んでくださるあなたの人生が、
少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。

弟の啓介は、数年前のコロナ禍のさなかに結婚していた。今流行りのマッチングアプリで出会ったそうだ。一方で、幸助と姉の成美は結婚していなかった。

もちろん、母親の介護が影響していなかったとは言えない。影響があったとしても、結婚という大きな壁を前に、あえてその道を避けるように人生を歩んできたのは事実だった。

仕事についても、父・勝彦の言う通り、過剰なまでに時間に縛られ、心身ともに疲弊していた。年末に突然風邪をひいて寝込んでしまったのも、蓄積された疲労が一気に噴出した結果だったのかもしれない。

結婚も、仕事も、介護も――それぞれが重なり合い、幸助の人生に静かに影を落としていた。

幸助はこれまで、サラリーマンとして定年までの長い年月を生きていくしかないのだろうと、諦めの気持ちを抱いていた。

しかし、父親から言葉をかけられた日を境に、幸助の中で何かが変わった。いや、変える必要があった。サラリーマンという縛られた環境から、時間に縛られない生き方、「好きなこと」で生きていきたいと強く思うようになっていった。

ただ、平日はとにかく忙しかった。そんな中でも、幸助は「これから何を職業にして生きていけばいいのか」と、自分なりに考え続けていた。しかし、明確な答えを導き出すことはできておらず、思考は堂々巡りを繰り返していた。

ある休日の午後、幸助は子供の頃、自分が何をしたかったかをぼんやりと思い返していた。幼い頃は、毎日のようにゲームばかりしていた。ただ、パソコンの前に座るとなぜだか「小説を書きたい」と強く思ったが、いざパソコンを起動すると、気づけばゲームを始めてしまっていた。幸助はそんな、どこにでもいるようなゲーム少年だった。けれど、その奥底には、物語を紡ぎたいという秘めた願望が、確かに存在していたのだった。

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