妹の代わりに謝り続けた人生を、今日で終わらせます【短編】
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「お姉様、どこへ行っていたの?」
ディアナが屋敷へ戻ると、ちょうど母と妹が優雅にティータイムをしているところだった。
ローゼは頬を膨らませながら、
「聞いてよ! あたし、お茶会で公爵令嬢にいじめられて大変だったのよ。本当にむかつくわ、あの女!」
「きっと美人なローゼに嫉妬しているのね。公爵令嬢って、ちょっとお顔が……ねぇ?」
「それもそうね。あんなブス、誰からも相手にされないわ。ぷぷぷ」
「あんな残念な容姿なのに、王太子殿下に色目を使っているらしいわよ」
「まぁ! 殿下が可哀想」
「そうよね。王太子殿下にはローゼのような美しい令嬢でないと」
母娘の品性のない会話に、ディアナは再び頭が痛くなる。
普段なら無視を決め込むところだが、今日は虫の居所が悪かった。
自分はさっきまで妹のために懸命に頭を下げていたのに、頭の悪い噂話に花を咲かせている二人がひどく憎々しく感じたのだ。
「あのねぇっ!」
珍しくディアナが声を荒げると、母と妹は少しビクリと肩を揺らせた。
「公爵令嬢は深い教養を持っていて、お気遣いも素晴らしい立派な方よ。それに、王太子殿下とは幼馴染で既に婚約も内定しているし、お二人が懇意にされていても何もおかしいことはないわ」
母と妹はきょとんとした表情で互いに目を合わせたあと、
「きゃはははは! 王太子殿下があんな不細工を選ぶわけないじゃーん」
「そうよ。あんなみすぼらしい女が国の代表になるなんて国辱ものだわ」
「……」
二人のあまりにも頭の悪さに、ディアナの怒りはするするとしぼんでいった。
こんなの、相手にするだけ時間の無駄だ。
「で、お姉様はどこへ行っていたの? もしかして、婚約者に隠れて別の殿方とデートしてたりして〜?」
しかし。
妹の無神経な一言に、彼女の怒りは再び膨れ上がる。
「教会にあんたの無礼を詫びに行ったのよっ!!」
ディアナの大音声の怒号が響いた。
「…………」
「…………」
部屋は少しのあいだ静まり返っていたが、
「え〜? あたし、知らな〜い!」
ローゼは悪びれずもせずに半笑いで言った。
「長女のあなたが謝罪するのは当然でしょう? ……まぁ、そんなに悪いこともしてないと思うけど、教会は大袈裟ねぇ〜」
そして母も次女に同意するのだった。
まるで他人事といった二人の態度に、ディアナはもう会話するのも嫌になって部屋に戻った。