妹の代わりに謝り続けた人生を、今日で終わらせます【短編】
「私って、本当に馬鹿ね」
自室に戻るなり、ディアナはソファーに置いてある硬めのクッションを強く殴った。もう一発。もう一撃。さらに力を込めて。殴る。殴る。殴る。
あれを見て固まったままの表情を崩せず、顔の表層の温度は冷たいままだ。でも、肉体の内側からは、燃えるような熱いものが込み上げてくる。
そういった矛盾する肉体を抱えてどうしようもなくて、解消するように無表情でクッションを殴り続けた。
アルベルトが妙に妹のことを気にかけているのは知っていた。
ローゼは身内から見ても美しすぎるから仕方ないと思っていた。妹自身も彼に甘えることが多かったので、可愛がりたくなるのは仕方ないと思っていた。
でも。
婚約者だけは自分の味方だと思っていた。
たしかに容姿は妹に比べたら格段に落ちる。しかし彼はそんな表面だけではなく、内面を真摯に見てくれていると思っていた。
「ふっ……ふふっ……」
一通り身体を動かすと、不思議と笑いが込み上げてきた。
自分は世界で一番の愚か者だと思った。母の代わりに家や領地の政務をやって、妹の代わりに謝って。唯一信頼していた婚約者には呆気なく裏切られて。
あんなクズ共のために、これまで自分は何をやっていたのだろうか。
一人だけ意気込んで踊り回って、本当に馬鹿みたいだ。貴重な時間を彼らに吸い上げられて勿体ないな……と思った。
ディアナは吹っ切れたように晴れやかな笑顔になる。
「あーあ。ケーキでも食べましょう、っと」