妹の代わりに謝り続けた人生を、今日で終わらせます【短編】
「やぁ、ディアナ嬢」
「ハインリヒ様、ご機嫌よう」
ディアナが第二王子のもとへ謝罪に行って以来、二人のあいだで交流が生まれた。音楽が趣味の二人は話が合い、すぐに親しくなった。
「本日はお誘いいただきありがとうございます。歌劇はあまり拝見したことがないので楽しみですわ」
「きっと君も気に入るとはずさ。――そうそう、今日は面白いものも見られると思うよ」
「……?」
彼は意味深に微笑む。
彼女はその意味が分からなかったが、実際にそれをひと目見たとき、彼の意図がすぐに理解できた。
「あの方は……」
その歌手を目に留めるなり、ディアナはぶるりと全身が震えた。
壮年の男性歌手だった。
絹のようなホワイトブロンドに、宝石の如き碧い瞳を持つ人物だった。それは、つい目で追ってしまうほどの美しさを持っていた。
ハインリヒは静かに語る。
「彼はあの美しさと滑らかな歌声で、デビュー直後から絶大な人気だったらしい。でも、歌劇の本場の都市へ留学すると言って、表舞台から十年以上去っていてね。それで、今年に入って戻って来たんだ」
「そうですか……」
王子が話している間も、ディアナの目はその歌手に釘付けだった。王族に対して無礼な行為だとは頭では分かっているが、どうしても視線が離せない。
だって、あの顔はどう見ても……。
ハインリヒはそんな彼女を咎めることもなく、不敵に笑う。
「君の今後の身の振り方に役に立つと思ってね。良かったら、後で王家お抱えの魔術研究者を紹介するよ。事が進みやすくなると思うから」