オンラインゲーム『ラピスラズリ』
シミュレーション

囚われ


熱は下がらず、父に運ばれて帰宅。
夜には、幾分か熱が下がったものの、眠れない。
水分補給に起き上がり、カーテンを開けた。
月明かりを頼りに、PCの電源を入れ、毛布に包まって椅子に座る。
サイトにログインすると、いつもの画像選択画面ではなく、光と闇に立つアバターが現れた。
バグだろうか。
アバターの後姿と無音。
光の輝きが散りながら、アバターの足元の闇へと落ちる。
すると、更に細かく光が散った。
アバターの首の辺りから、次々と落ちる光。
そして、高音のバイオリンが切なく流れる。
矢印を押していないのに、闇へと沈んでいくアバター。
闇の中に沈んだアバターが、ゆっくり回転して、身体を丸めた。
正面を向いたアバターに驚く。
目から涙を零し、頬を伝って、闇に光を散らす。
そして、また無音……。

闇に落ち、いつもより速いスピードの摩擦音。
どんどん漆黒の闇に染まる画面に、輝きを増す涙。
画面の角度が変わって、上部を映しだす。
螺旋状に、闇に光を刻んで、幻想的な世界。

…………


意識が途絶え、夢心地。
気づけば布団の中で、朝に目覚めた。
PC画面は、画像を映したまま。
丸くなって、横になったアバターは闇の底に着いたかのようだった。
まるで、アバターが死んでいるような暗黒の世界。
何故か手が震え、エンターキーを押して反応を見守る。
アバターは身を起こして、座った状態で周りを見渡した。
手さぐりで立ち上がり、上部を見つめるが、視覚に変化はない。
一筋の光も届かない暗闇。
そこに音声が聴こえた。
「俺のヒロインになって欲しい。」
今までにない事。
だって、これは“独創サイト”一人の世界……
カーソルが点滅し、文字の入力を待っている。
私は戸惑いながら、キーを打っていく。
gome(ごめ) n入力の途中、PCは光を放つ。
闇を払い除けるほどの、強力な眩い光。
暗闇に慣れた私の目には、痛い程。
両目を押さえ、何が起きたのか、全く理解できなかった。
PCは、壊れてしまったのだろうか?
現実の事で、頭が一杯だった。
どうして壊れたのか、どのように親に説明しようか、混乱の動揺。
光自体が抑えられたのもあるのか、目は慣れて、現状の確認の為、私は画面に視線を移す。
絶句……


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