オンラインゲーム『ラピスラズリ』
ヒロイン
教室の中は、穏やかに時間が過ぎる。
授業に耳を傾け、黒板の文字をノートに綴っていく。
去年は違うクラスの晴が、今は同じで、授業も一緒。
学校以外を共にした時間が、逆転……
晴を好きだと思ったのは、いつだろうか。
周りが色めき、想いに恋にデートに、話題を展開させた。
一番、身近に居て、共に居る時間を望んだ異性。
晴のヒロインは、私ではなかった。
選んだのは木口さん。
少し茶色い柔らかな短い髪が、よく似合う可愛い顔。
背は低くて、晴の隣に相応しい女の子らしさの表れた振る舞い。
言葉は歯切れよく、自分の意見を的確に伝える。
自分と異なる女の子に嫉妬も出来ず、自分の情けなさと消えたい気持ち。
届かない無駄な足掻きも出来ず。
アバターは、彼女に近い姿。
なのに、囚われたのは私だと思えるなんて……
ヒロインは私じゃない。
彼女は、闇を選ばない。磔は、光の中。彼女に相応しい場所。
助けなくても……行動を起こさない私に、嫌気がさして……
違う。アバターが私に似つかわしくないのを知っている。
登録には、私の個人情報。ヌイグルミの返却は私。
助けないといけない。あのまま、逃げたのではいけない。
逃げては、手に入らない。
サイトの関係者は、目的があって、私のアバターを捕らえた。
“ヒロイン”の意味するところは、私には分からない。
グルグルと同じ思考と結論に、自分を奮い立たせて、決意を強める。
先の読めないサイト。ログイン時だけは、囚われてあげる。
学校での一日を終え、帰り支度。
晴に近づく木口さん。
大きな目で見つめる晴への視線は、愛しさの伴うもの。
頬を染め、甘えるような声。
晴の視線も……あれ?違和感。
私の視線に、晴が気づいたのか目が合った。
思わず逸らして、荷物を持ち、教室を走って飛び出す。
ドキドキと、心音が早くて大きくなる。
どうして?晴が気づく程、私は木口さんを見つめていたのだろうか。
恥ずかしい。きっと、周りにも気づかれたかもしれない。
未練?まだ、自分の中で消化できない、燻った感情があるのだろう。
知られたくない。
違和感は、きっと……晴の木口さんに向けた目が、幼馴染の私とは違う視線だったから。
私の想いは、恋だったのだろうか……
以前に感じた晴の静けさが、冷たく感じるなんて。ありえない事だ。
失恋は、完全にとは言えないけど痛みなどない。
あのサイトが、私を癒してくれた。
それなのに、今は、そのサイトが私を混乱に突き落す。
アバターを解放して欲しい。
『ヒロイン』ゲームなのか、物語なのかも分からない。
要求を受け入れれば、満足なのかな?