オンラインゲーム『ラピスラズリ』

ゲームで出会って1年。
ゲームをしながら会話を毎日のように続けた何か月間。
これはゲーム。リアルじゃない。まして。


「こんにちは」
個人あてのチャット。
相手の名前は、ぽこぽんさん。アバターは男。中身も男。
前に発言した時、パーティーに居た人だ。
「どうも、どうしましたか?」
「近くで狩りをしているのですが、見かけたので。もしよければ、一緒に狩りをしませんか?」
普段なら断るのだけど。
今日はのんびり、カプリチオと遊ぶ予定だった。
その予定も彼はギルド優先で、私のことなど気にもしない。
「よろしくお願いします」
パーティーを組み、ボイスをオフにする。
「さっきまで一緒だったのはカプリチオですよね。彼のギルドには入らないの?」
彼からはボイス。
文字打ちは面倒だけど、リアル設定の嘘がバレるのは嫌だから。仕方ない。
「フレンドは同じギルドでなければいけない?」
「メリットを考えると、なぜ入らないのかと疑問。だって大手ギルドのファンタジアだろ。しかもサブマスのカプリチオ。もしかして主婦って。カプリチオのリアル妻?ん?それなら入ってるのか。いや、ギルド方針的にはあれなのか?」
後半、考えが独り言で流れてきてますね。
ギルド方針か。
姫と呼ばれる存在が、現実でもサークルクラッシャーと呼ばれるように。
オンラインゲームでは、中身の分からない女性アバターがギルドを崩壊させるのだとか。
それより。
「サブマスって何?」
「マジか。ギルドのリーダーがマスター。ギルマス。その補助がサブマス。カプリチオは、ファンタジア創設メンバーで有名だろ。」
「知らない。」
「マジか。」
「まじっす」
「あんた、面白いね。ギルド誘われただろ?何故、入らない?大手だからか?」
質問攻め。
何が気になるのかよくわからないけれど。
「ゲーム初心者だから迷惑かけたくない。ソロで十分。」
「へー。一緒に遊んでるんだろ?楽しいからだよね。……好きなの?浮気?」
そう、このゲームに限らずオンラインゲームで耳にする噂。
主婦だけでなく既婚者が、ゲーム内の結婚シルテムを使って疑似的恋愛を楽しみ、リアルで会うなど。
「これはゲーム。二人とも割り切って遊んでいる。だからカプリチオはギルド優先。」
打ち込みは文字数の制限がある。
言葉足らず、真意が時には伝わらない。それでも。最低限。
この人なら、誤解されてもいいや。
「なぁ、俺のギルドも大手なんだけどさ。ギルド名はファクト。俺がギルマスなんだ。来ないか?」
私は何故か、すんなりとギルドに加入した。
ギルド、ファクトに。
事実そのもの。見えなかったものが見え、すべてを覆して後悔する。
それでも、たとえ入らなかった過去に修正したとしても未来は変わらない。




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