彼女の季節を戻したい
いつもの彼女
「よお、冬青」
「何?」
武に声をかけられた。
「ずいぶん仲良くなったみたいだなぁ、おまえ」
葵のことだと気づいた。
きっと、朝に挨拶を交わしていたからだろう。
あとは‥…柊里の話も少ししたっけな。
「柊里に関して協力してくれたしね。それに……」
「ん?」
「言ったと思うけど、この前手伝いでもでも一緒だったから」
「ああ、農作業か。そういえば言っていたなぁ」
「そう」
どうやら納得してもらえたみたいだ。
「けれど知っているか? 彼女、結構人気らしいぞ」
「そうなの?」
「ああ、目立つもんな」
「そうかもね」
武は一体何が言いたいのか。
「それにしてもさ」
「ん?」
「最近、ヒカルが彼女とよく喋っているのを見かけるよな」
「そうだね。席も隣だし」
金曜日に、席替えがあって、斜めだった僕と武は隣に。
その三つ前でヒカルと葵が隣になっていた。
「それだけじゃないよな……」
「そう?」
別に普通だと思うけどなぁ。
「まあいっか」
武はそう呟いて、前を向いた。
葵は、まだヒカルと話している。
「『NIGHT PLAY』が……」
と、そんなことが聞こえてくるから、好きなアーティストの話でもしているのだろう。
それにしてもヒカルがアーティストを知っているなんて驚きだ。
ヒカルは……武と同じで動き回っているイメージしかない。
授業が始まった。
「それじゃあ早乙女さん、答えて」
「二番です」
「そうですね。これは……」
実は彼女、成績は普通にいい。
お父さんを亡くして勉強に害は……あったみたいだけど、予習を進めていたから、授業に追いつかれたくらいなんだそう。
そして習ったところはちゃんと理解している。
だから、成績は良いみたいだった。
昼休みになった。
僕は、外に遊びに向かっている葵をちらりと見て、図書室に向かう。
昨日、また一冊読み終わったからね。
「サッカーたまにはしたくない?」
「サッカー? いいね!」
周りの人がそんなことを大声で言っているのが聞こえるからきっとサッカーでもやるつもりなんだろう。
葵は……運動は得意でも苦手でもない、という感じだが、するのは好きみたいだ。
「真面目なところも、受けが良いんだぞ」
などと、武が言っていた。
それから、僕は本を返して、面白そうな本を探していたら、最近映画化したという恋愛小説を見つけた。
……そういえば、柊里が読みたい、なんて言っていたっけ。おせっかいかも知れないけれど借りてあげようかな。
そんなことを思って、それを借りることにした。
午後の授業は相変わらずで、帰りの会も終わった。
僕は、武と話しながら、帰りの準備をする。
葵は、とっくに帰っていた。
相変わらず早いなぁ。
そんなことをいつも思う。
なぜだろう?
まだまだ、彼女に聞きたいことは無くならない。