クロとシロと、時々ギン

真実はすぐそばに(6)

 それでも、と私は思う。

 たとえシロヤギさんがシロ先輩ではなかったとしても、私はやっぱりシロ先輩が好きだ。
 その上で、シロヤギさんがシロ先輩だったら、なお嬉しい。

 私は決意を固めると、顔を上げた。

「矢城さんの気持ちは決まったみたいだね」
「はい。明日、シロ先輩に直接聞いてみます」

 白谷吟は、私の返事を聞くと嬉しそうに微笑む。
 それから大きく息をつき、椅子の背もたれに寄りかかって天井を見た。
 そして、ものすごく小さく呟く。

「そっかぁ。史郎の運命の人は、矢城さんだったかぁ」

 その顔には、微かに憂いが浮かんでいるように見えた。
 思わず口を開く。

「いえ。どちらかと言えば、白谷先輩の方が、シロ先輩の運命の人だと思いますよ。子供の頃からずっと一緒にいる人なんて、そうそういませんよ」

 私の言葉を聞くと、白谷吟は驚いた顔をした。
 まるで聞こえていたのかと、一瞬バツの悪そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔を向けてきた。

 けれどその笑顔には、やはりどこか寂しさが滲んでいる気がした。
 白谷吟は、何かを誤魔化すように明るい声で言う。

「とにかくさ、明日、史郎に直接確認してごらんよ。ごめんね。期待した答えをしてあげられなくて」
「いえ。ありがとうございます。一人で悶々と考えているよりも、スッキリしましたし、背中を押して貰えましたから」

 私は頭を下げた。
 白谷吟はいつもの爽やかな笑みを浮かべる。
 それから彼は腕時計に目をやった。
 そろそろ帰ろうかということになり、私たちは席を立つ。

 会計の際、白谷吟は伝票を持ってレジへ向かった。
 私は慌てて鞄から財布を取り出す。
 すると、白谷吟は首を振った。

「今日は僕の奢り。まぁ、僕からのお祝いだと思って」

 そう言って、白谷吟はさっさと支払いを済ませてしまった。
 私は申し訳ないと思いつつも、ありがたく厚意を受け取ることにした。

 店を出ると、もうすっかり日が落ちて暗くなっていた。
 私が礼を言うと、白谷吟はひらりと手を振って「また明日」と言った。
 私も挨拶を返し、駅に向かって歩き出す。帰り道、私は何度も白谷吟の表情を思い出す。

 白谷吟は、なぜあんなに寂しそうに笑っていたのだろうか。
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