クロとシロと、時々ギン

二日酔いジェラシー(2)

 私は苦笑をして再びパソコンに向かった。そうして、いつも通りの業務をこなしていく。
 たまにシロ先輩の様子を伺うと、まだ本調子ではないのか、時折頭を押さえていた。使い物にならなそうな先輩の姿に、今日は外回りの予定がなくてよかったと胸を撫で下ろす。

 昼休みになり、食堂へ向かおうと席を立った。シロ先輩に声をかけようと思ったが、まだ二日酔いに苦しんでいたので、仕方なく一人で行くことにする。
 エレベーターに乗り込み、ぼんやりしていると、背後から突然肩を叩かれた。振り向くと、爽やか笑顔の白谷吟がいた。

「あっ、お疲れ様です。白谷先輩も今からお昼ですか?」

 声をかけると、彼はニコリと微笑んだ。

「うん。矢城さんも?」
「はい」
「じゃあ、一緒に行こう」

 そのまま二人で食堂へ向かう。向かう先は同じなので自然と並んで歩いていたが、こうして彼と歩くのは初めてだと気づいた。そうすると、周囲の目が気になってきて、ソワソワとしてしまう。

「昨日はお疲れ様。今日、史郎ダメでしょ?」

 唐突な問いに、一瞬何を聞かれたのか分からず戸惑った。

「え? あ、シロ先輩ですか?」
「そっ。あいつさ、たまにあんな感じになるんだよね。何かあったのかなぁ」

 シロ先輩の不調の原因を知っていると思われているのだろうか。

「さぁ……?」
「あいつさ、実は結構ストレス溜めやすいんだよねぇ。あんまり表には出さないんだけど」
「そうなんですね」

 相槌を打ちながら、この人はシロ先輩のことをよく見ているんだなと感心した。

 シロ先輩は誰とでも屈託なく話す。だが、どこか冷めているというか、他人と一線を引いているような印象を受けることがあった。
 昨日の白谷吟の話によれば、本来の彼は人見知りで、なかなか素を見せられないタイプらしい。それでも社交的に振る舞っているため、ストレスを抱えやすい。白谷吟はそれを心配しているようだった。
 シロ先輩がストレスを抱えているなんて、意外だと内心驚く。

「だから、もし昨日みたいになったときは、フォローしてやってくれない?」
「私なんかがシロ先輩をフォローできるでしょうか?」

 つい先日、シロ先輩が転職するかもしれないと知って動揺しまくりだった私に、彼を支えるなんてできるのだろうか。
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