クロとシロと、時々ギン

二日酔いジェラシー(4)

 そんなことを笑顔で言いながら、白谷吟は唐揚げを1つ、私のお皿に乗せてきた。

「え?」
「やっぱり、女の子の食事を見てると少ないなぁと思っちゃうんだよね。だから、お裾分け」

 絶対に少なくはないと思いつつも、唐揚げは好きなのでありがたくいただいた。サクッとしていて美味しい。

 そんなこんなで、しばらく二人で昼食を食べた。
 白谷吟は本当に良く喋る。まるで以前から知り合いだったかのように、気さくに話しかけてくれる。彼の話はとても面白く、すっかり聞き入っていた。気づけば、あっという間にランチを完食していた。

 時計を見ると休憩時間も残り十分。そろそろ戻ろうかという話になり、私たちは席を立つ。
 白谷吟の手には最後まで残されたサンドイッチがあった。

 そのまま一緒にオフィスへ戻り、課の違う白谷吟と別れようとしたときだった。
 ちょうど廊下の角から出てきた人物とぶつかりそうになった。咄嗟に避けようとした私は、バランスを崩して倒れそうになる。
 しかし、相手の動きの方が早かった。腕を掴まれ身体を支えられた私は、次の瞬間には――誰かの腕の中にいた。何が起きたのか分からず混乱する頭の中で、抱きしめられていることだけは理解できた。

 私を抱きとめるスーツからは、嗅ぎ慣れた香り。
 恐る恐る顔を上げると、そこにはシロ先輩がいた。私からすぐに手を離した彼も、驚いたように目を見開いている。

「やぁ、史郎。体調はどうだい?」

 そんな白谷吟の飄々とした声で、私はハッとする。
 シロ先輩の顔色は午前中よりも良くなっていた。むしろ頬に赤みすら差しているように見える。午前中の青ざめた顔が嘘のようだ。
 私が密かに安堵していることなど知らないシロ先輩は、白谷吟の問いに答える代わりに眉をひそめ、私と白谷吟を見比べた。

「吟……と、クロ? なんで一緒に……?」

 その声音には微かな困惑が滲んでいるように感じられた。
 一方、白谷吟はそんなシロ先輩の様子を気にも留めず、ニヤリと笑う。
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